ホーリーホックリポート
2024年08月06日(火)
水戸ホーリーホック30周年記念イベント ~後編~
水戸ホーリーホック30周年記念イベント ~後編~選手
2024年7月23日、水戸市泉町の水戸市民会館ユードムホールにてクラブ創設30周年記念イベント「MITO HOLLYHOCK 30th ANNIVERSARY EVENT」が開かれ、クラブの歴史と未来が語られました。今回はその内容を前編・後半に分けて一挙にレポート!後編では、東日本大震災を経験した2011年から現在までをご紹介!また、最後には監督と社長も登壇し、熱い思いを語ってくれました!
水戸ホーリーホック30周年記念イベント ~後編~選手

(前編はこちら 第三部 2011-2018 震災を経て、この街のために
東日本大震災、苦境の残留争い
数々の困難を乗り越えたレジェンド達が登場
トークイベント第三部は、推しレジェンド選手権の上位にも選ばれた本間選手、三島選手、船谷さん、鈴木さん、そして元選手の飯田優二ジュニアユース監督が登壇しました。

東日本大震災を経験した水戸ホーリーホック この時代を語るうえで決して外す事ができないのが、2011年3月11日の東日本大震災。リーグ戦を翌日に控え、ちょうど練習中だったチームは水戸市河和田町のツインフィールドで震災を経験しました。 「大きな揺れがあって『大変だ』とみんな動揺していたのですが、当時は元日本代表キャプテンの闘将・柱谷哲二監督の時代。とんでもなく強い余震が続くなかでも「明日のJリーグはやるかもしれない」と練習を続けていましたね」と振り返る本間選手。 「でも、さすがにスタッフが練習を中止にして、その後、最初に控室から逃げたのは柱谷さんでした(笑)。切り替え早い(笑)」とユーモアたっぷりに当日の様子を伝え、会場の雰囲気を明るくします。

当時を振り返る本間選手 日本サッカー界のレジェンドでもある鈴木さんは、震災を機に、故郷・茨城にある水戸ホーリーホックへ加入した一人。 「被災したチーム、水戸市、茨城県に貢献したい気持ちで始めましたが、結局、一番自分が応援されて、サッカー選手を4年も続けさせて貰えました。何かしたかったのに、皆さんからいろいろと力を貰えて、感謝の気持ちで常にプレーしていました」 当時、全国ニュースで驚きを持って伝えられた鈴木選手の水戸への加入。被災したファン・サポーターたちの心からの声援に、実は複雑な心境であったことも語られました。

日本サッカー界のレジェンド鈴木隆行さん 時は過ぎ2015年。ホーム最終戦まで残留争いを繰り広げた苦しいシーズンは、コンサドーレ札幌とのホーム最終戦の終了間際、三島選手の劇的ゴールによって残留を決めました。

2015年J2 第41節 後半アディショナルタイムに三島選手のシュートがゴールネットを揺らし、水戸のJ2残留を決めた 「残留争いの辛い年だったので、喜びが爆発した瞬間でした」と三島選手。そのゴールをアシストした船谷さんも「辛いシーズン」と評しつつ、同学年で共にプレーした岩尾憲選手(現徳島ヴォルティス)、馬場賢治さん、田中雄大さんらと一緒にチームをまとめ上げ、「周りが助けてくれた部分が大きかったです」と、あの年を懐かしそうに語ります。

三島選手の劇的ゴールをアシストした船谷さん そして話題は、この頃の「思い出のゲーム」に。島田監督は2012年のアウェイ湘南ベルマーレ戦、飯田監督は自身が出場したホームの鳥取戦を挙げ、「震災から再開された時期のゲームでしたから感慨深く、自分たちがサッカーをやっている意義を感じた試合でした」と思い返していました。

震災後のゲームの思い出を語る飯田優二監督 そして当時、水戸のエースとして活躍した三島選手の忘れられない試合は、シーズン途中で松本山雅FCに移籍する直前のホーム町田ゼルビア戦と、移籍直後の古巣・水戸ホーリーホック戦。 「あの時ほど、あんなすごい感情でやった試合はないです。町田戦ではウォーミングアップでサポーターの皆さんが横断幕や応援歌を歌ってくれた時点で泣いていて、終わった後も泣きながら挨拶しました。僕にとって一番思い出深いシーンですね。それで移籍してホーム一発目の試合が水戸戦ですから、こんな気まずい試合はなかったです。感情的にも難しい試合でした」

忘れられない水戸のファン・サポーターへの思いを語る三島康平選手


第四部 2019-2024 未来に立ち向かえ
躍進した2019年
コロナ禍から降格危機の苦難を乗り越える

第四部には「あの2019年」を経験した現役メンバーが登壇 トークリレーの最後は、2019年から在籍する村田航一キャプテン、2018年~2019年に在籍し、2024年も水戸に戻りプレーする黒川淳史選手、『バンディエラ』本間選手の3人が、クラブ史上最高順位を記録した2019年とその後のコロナ禍、そして現在について語りました。 勝ち点と得失点差に並びながらも総得点わずか1ゴール差でプレーオフに届かず、最終節後の瀧澤修平選手のヒーローインタビューが涙を誘った2019年。

2019年J2 第42節(水戸1-0岡山)DF瀧澤選手のゴールでプレーオフ進出に手を掛けた水戸だが、僅か得点1差及ばず涙を飲んだ

「最終節の岡山戦のスタジアムは忘れられない。水戸史上最高の雰囲気でした。あれを越えたいなという思いです」と言葉に力を込める本間選手。 当時大卒ルーキーだった村田選手は「僕もあの景色をもう一度観たいと思ってサッカーをやっています。プロ一年目の年の喜びもあり、ユニークで素晴らしい先輩達がたくさんいらっしゃって、怒られたりもしたけれど、楽しい経験ができました」と語り、黒川選手は「当時は小僧だったのですが、皆さんに助けてもらって活躍できたと思います」と振り返ります。

長谷部茂利監督(現アビスパ福岡監督)の指揮のもとクラブ史上最高の7位に躍進した選手たち

ホームで行われた最終節には8,575人もの大観衆が詰めかけスタジアムを揺らした 気持ちを新たに、再びプレーオフ進出を目指した翌年2020年。世界中で猛威を振るった新型コロナの流行が国内にも広がると、その影響でリーグ戦の中断、応援の中止などを余儀なくされた異例の時期。 「無観客は特にきつかった。いつまで続くのか、また元に戻るのか分からず、毎回練習試合をしているようで面白くなかった」と本間選手。 「選手からも『サッカーやっている場合か?』という疑問の声が出て、僕自身もサッカー選手の存在意義を考えたり、無力感も感じた」と話すのは村田選手。再開した時には「サッカーをやれるのは当たり前じゃないと感じられました。振り返れば、自分の源になるような時間になったと思います」と心境の変化がありました。

コロナ禍の心境について語る様子 そして現在。2015年以来の降格の危機に瀕しているチームは『J2残留』を最大のミッションとして残り13試合を戦います。 今回のイベントを冒頭から見ていた村田選手は「自分達が長い歴史の一端を担っていると感じましたし、絶対に水戸を降格させてはいけないと感じました。ここから上にあがっていきたいという気持ちが改めて沸きました」と意気込みを語ります。

J2残留への思いを語る、村田航一選手 また終盤戦のキーマンとして期待される黒川選手は「今季はこれから巻き返し、J2に残留したいです。水戸はこれから2019年を越えるシーズンを過ごさなければいけないですし、絶対にできると思います。『2024年があったからこそ、水戸が良くなった』と言われるようなシーズンにしていきたいと思います」と決意を口にします。

終盤戦のキーマンとして期待される黒川淳史選手 ミスター・ホーリーホックの本間選手は「30年という長さと重さと、繋いできてくれた人達に感謝の想いが更に沸きました。皆さんの力は本当に大きいので、これからもともにクラブと歩んでくれたら幸せです。これからもよろしくお願いします」と周囲への感謝を述べました。

(写真左から)本間幸司選手、村田航一選手、黒川淳史選手


一歩一歩前進し100年続くクラブの礎を築く 森直樹監督が絶対残留への固い決意を表明 水戸ホーリーホックの選手として3年、指導者として19年に渡り力を注いだ森直樹監督は、サッカー人生のほとんどをこのクラブとともに歩んで来た一人。 「クラブ30周年の節目で監督をやらせてもらい、非常に責任を感じています。ただ僕は一切、下を向かず、常に前を見ています。今までチームを支えてくれた素晴らしい選手達、チームスタッフ、パートナー企業様、各行政様、地域の皆様、そしてここにいるファン・サポーターの皆様がいるから、今後もしっかり戦っていけると思っています。絶対にJ2に残留して、来年もまたこの舞台で戦います。そして、来年はもっと上を目指せるように成長していきたいと思います。悪い状況ですが、一緒にチームと前を向いて、上を向いて戦ってください。これからも応援よろしくお願い致します」と水戸ファミリーに共闘を呼びかけました。

森直樹監督 また、小島耕社長は「クラブは苦しい状況を迎えていますが、森が力強い言葉で絶対に残留させると言ってくれました。現場のリクエストに応えながら、現場を信じて、少しでも残留に近付けるよう、1%でもその確率を上げられる仕事をしていきたいと思っています」と残留への意気込みを語ります。

小島耕社長 Jリーグは責任企業を持つクラブが増え、クラブの生存競争が激しくなる昨今、常に攻めの経営を続ける小島社長は「新潟や甲府など、我々の後に生まれたクラブがJ1に行き、アジアに行っています。水戸はできますか?やりましょうよ、皆さん!」と呼びかけると、会場には賛同の拍手が。 「このクラブは皆さんのもの。地域の宝であって欲しいです。クラブが強くなり、J1に行くことも大切ですが、31年、50年、100年と続く礎をしっかり作っていくことも大事です。一歩一歩の前進を毎日作っていきたいです。引き続き、熱く長いサポートをお願いします」と語り、イベントを締め括りました。

水戸ホーリーホックは、約3週間のサマーブレイクを経て、8月3日のアウェイ、V・ファーレン長崎戦から再開するリーグ戦に挑み、2-1で勝利を収めました。先人達が紡いだ30年の歴史を未来に繋ぐ戦いは、まだまだ続きます。 前編の記事水戸ホーリーホック30周年記念イベント ~前編~はこちら


バックナンバー

Vol.127 新井晴樹選手 インタビュー

Vol.126 久保征一郎選手 インタビュー

Vol.125 齋藤俊輔選手 インタビュー

Vol.124 水戸ホーリーホック30周年記念イベント ~後編~

Vol.123 水戸ホーリーホック30周年記念イベント ~前編~

Vol.122 松原修平選手 インタビュー

Vol.121 牛澤健選手 インタビュー

Vol.120 長尾優斗選手 インタビュー

Vol.119 水戸ホーリーホック シーズン序盤戦レポート

Vol.118 2024Jリーグ開幕直前!
水戸ホーリーホック密着レポート

Vol.117 開幕直前!沖縄キャンプレポート2024

Vol.116 「2024シーズン新体制発表イベント」レポート

Vol.115 2023シーズンオフ チーム活動レポート

Vol.114 2023シーズン最終節観戦レポート

Vol.113 2023シーズン最終節直前レポート

Vol.112 長井一真選手 インタビュー

Vol.111 草野侑己選手 インタビュー

Vol.110 松田佳大選手 インタビュー

Vol.109 JX金属サンクスマッチ
今年も日立で開催!

Vol.108 春名竜聖選手 インタビュー

Vol.107 寺沼星文選手 インタビュー

Vol.106 前田椋介選手 インタビュー

Vol.105 田辺陽太選手 インタビュー

Vol.104 井上怜選手 インタビュー

Vol.103 いばらきサッカーフェスティバル2023 マッチレポート

Vol.102  開幕直前!2023沖縄キャンプレポート

Vol.101 「2023新体制発表会」イベントレポート

Vol.100 2023シーズン新監督・新加入選手記者会見

Vol.99 アツマーレから選手たちの公開自主練習をレポート

Vol.98 キャプテン新里涼選手と振り返る2022シーズン

Vol.97 楠本卓海選手 インタビュー

Vol.96 県北6市町 ホームタウン追加決定記者会見

Vol.95 梅田魁人選手 インタビュー

Vol.94 後藤田亘輝選手 インタビュー

Vol.93 髙岸憲伸選手 インタビュー

Vol.92 山田奈央選手 インタビュー

Vol.91 杉浦文哉選手 インタビュー

Vol.90 松田隼風選手 インタビュー

Vol.89 茂木秀選手 インタビュー

Vol.88 いばらきサッカーフェスティバル2022 鹿島アントラーズ戦レポート!

Vol.87 アツマーレ入学式&新加入選手紹介!

Vol.86 秋葉忠宏監督 インタビュー

Vol.85 黒石貴哉選手 インタビュー

Vol.84 中里崇宏選手 インタビュー

Vol.83 藤尾翔太選手 インタビュー

Vol.82 中山開帆選手 インタビュー

Vol.81 大崎航詩選手 インタビュー

Vol.80 新里涼選手 インタビュー

Vol.79 安藤瑞季選手 インタビュー

Vol.78 タビナス・ジェファーソン選手 インタビュー

Vol.77 2021シーズン、革新!!

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