栗好き必見!栗王国茨城で味わう秋の味覚!!
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栗専門店「小田喜商店」に聞く、笠間の栗の魅力
笠間市は昼夜の寒暖差が大きく水はけのよい火山灰土壌に恵まれており、県内でも栗の栽培が盛んです。特に岩間地区に栗畑が集中し、町の至る所でその風景を目にすることができます。そんな栗のまち岩間で長年愛されてきた「いわまの栗や小田喜商店」。代表取締役・石田啓一さんに岩間の栗の魅力を伺いました。
岩間の栗や小田喜商店の代表取締役・石田啓一さん。栗への愛情が非常に伝わってきました!
笠間市の栗の歴史は比較的新しく、産地として広まったのはおよそ60年以上前。当時は蚕(かいこ)やタバコ産業が盛んで、東京の方が栗畑の面積は多かったといいます。しかし、東京オリンピックなどによる土地開発で東京の栗畑が激減。同時期に岩間周辺の養蚕業も衰退。そこで、小田喜商店をはじめとする岩間周辺の栗問屋が近隣の農家さんに栗への改植を勧め、その栗を買い取り、東京へ販売したことから、笠間市岩間地区を中心に、日本を代表する栗の産地へと成長していきました。
笠間の栗の特徴は、品種によってもさまざまです。早生栗は色鮮やかで香りが良く、ホクホクとした食感が魅力。甘露煮やペーストなどの加工品などに向く品種が多いのが特徴です。代表的な品種の丹沢は、果肉が鮮やかな黄色で香りが豊か。甘露煮やペーストにすると美味しく仕上がります。近年人気が出ている新品種のぽろたんは、切れ目を入れて加熱すると渋皮までポロッと剥けるのが大きな特徴。鬼皮と渋皮がぽろっと剥け皮ぎしが残るため、焼き栗や栗おこわにすると、皮ぎしの旨みをそのまま楽しめます。
中生栗も香り豊かな品種が多いのが魅力。代表品種の筑波は日本で最も多く栽培されている栗で、果実の先端に薄毛があるのが特徴。ホクホクとした食感で甘みが強く、甘露煮にも渋皮煮にもおすすめです。銀寄は日本で2番目に多く栽培されている品種。光沢が少なく横に広く平らな形が特徴。大粒で甘みが濃く風味も豊かで、こちらも甘露煮にも渋皮煮にもおすすめです。
晩生栗は品質が高く貯蔵性にも優れているのが特徴。代表品種の石鎚は赤茶色でツヤがあり、やや大粒で甘みがしっかり。煮崩れしにくいため、渋皮煮に向いています。そして栗の季節の最後を締めくくるのが岸根。果実の先端に膨らみと薄毛があるのが特徴。大粒で芳醇な香りと強い甘みを持ち、加工にぴったりな品種です。
この他にも数多くの品種があり、それぞれに違った美味しさが楽しめます。お気に入りの栗を探すのも笠間ならではの楽しみ方です。
栗は秋に完熟すると自然に落ちます。農家は落ちたばかりかどうかを瞬時に見極め、新鮮な栗だけを一つひとつトングで拾い集めます。実が詰まってふっくらとしてツヤのある栗を選び抜くのはまさに熟練の技。シーズン中は、毎日欠かさずこの作業が行われています。
また、栗の加工に欠かせないのが“栗むき”です。これは、「むき手」さんが専用の包丁で一粒ずつ丁寧に皮をむく作業。長年の経験が必要となる職人技です。岩間地区では栗生産者たちもこの仕事を担っており、大切な収入源になっています。しかし昨今は後継者不足が課題に。そのため笠間市では「むき手マイスター養成講座」を毎年開催。伝統技術の継承にも力を入れています。
収穫された栗は鬼皮に覆われていますが、実はとてもデリケート。木から離れた瞬間から鮮度が落ち始めます。まずは採ったらすぐに冷蔵庫で保管するのが大事。「栗も呼吸をしています。-2.7℃以下の冷凍保管では栗が凍って死んでしまうといわれています。小田喜商店では収穫してすぐに洗浄し、-1℃の冷蔵庫で保管し、鮮度を保ちながら製品を作っています。」と石田さんはいいます。
また、熟成度合いによって味わいが変化します。採れたての栗は甘みが少なくホクホクとした食感。ただし香りは最も強く、香りが逃げないうちに甘露煮やモンブランにすると栗の風味を存分に楽しめます。一方で、“甘い栗”を作り出す方法が『低温熟成』。栗を約-1℃で保存すると冬眠状態になり、デンプンがゆっくりと糖に変化していきます。2週間で甘さは約2倍、1か月で約3~4倍にまで増し、濃厚で甘い栗が完成。焼き栗や栗おこわなど、栗の甘みを存分に楽しめる料理に加工するのに使われます。
このように小田喜商店では、研究を重ねながら地元の生産者と力を合わせ、新鮮で美味しい「岩間の栗」を届け続けています。
岩間地区をはじめ笠間市では、市内の至る所で個性豊かな栗を味わえるのも魅力。モンブランを提供しているお店を紹介した「笠間の栗もんぶらん旅マップ」も配布されています。さらに、10月に開催される「かさま新栗まつり」では採れたての栗料理はもちろん、栗をテーマにした笠間焼やクラフト作品にも出会えるなど、まさに栗づくしのイベントが楽しめます。
日本一の栗の町・笠間で、秋ならではの味覚を心ゆくまで堪能してみてください!
店舗情報
いわまの栗や 小田喜商店
住所:茨城県笠間市吉岡185-1
営業時間:10:00~17:00
定休日:9月~12月 無休、1月~8月 日曜・月曜・祭日休み、他 不定休
TEL:(0299)45-2638
HP:https://www.kurihiko.com/
秋になると笠間市周辺にはこんなに大きな栗が至る所に落ちています
剥いたばかりの栗は、酸化防止と温度冷却のため流水に浸し、その後冷蔵庫で保管します
小田喜商店の自慢の栗甘露煮は、一つひとつ目で確認しながら作られています。
この時期笠間に訪れる際は、モンブランや栗の魅力を巡る旅に出かけてみては
最高級の栗「飯沼栗」!下飯沼栗生産販売組合インタビュー
茨城町で栽培される最高級ブランド栗「飯沼栗」。栗を扱う専門家なら誰もが知るこの栗は、市場でも「最高級の栗」と称されています。独自の栽培方法や徹底した品質管理が評価され、栗として全国で初めて地理的表示(GI)保護制度※に登録されました。特別な栽培方法と厳しい選別を経て、飯沼栗となれるのはごくわずか。今回は下飯沼栗生産販売組合・東ヶ﨑竜男さんにその魅力を伺いました!
※地理的表示(GI)保護制度…地域の特性に基づく品質や評価を持つ農林水産物や食品の名称を知的財産として保護し、ブランド価値を高める制度
下飯沼栗生産販売組合・東ヶ﨑竜男さん
貴重な飯沼栗についてお話してくださいました!
飯沼栗ってどんな栗?
飯沼栗は、「一毬一果(いっきゅういっか)」と呼ばれる特別な技術で、1つのイガに1粒だけ実を付けるよう栽培されます。そのため実は大きく、一粒に甘さが凝縮して強い甘みを持つのが特徴です。晩生品種「石鎚」を用い、厳しい選別と丹精込めた管理のもとで生産しています。
東ヶ﨑さんの農園は約12,000坪。50年ほど前にお父様が植えた木を、今も大切に管理し続けています。「勢いのある枝を切り、栄養を他の部分に回すことで新しい枝が育ち、良質な栗ができます。古い木を元に剪定(せんてい)をしながら、何十年も木を絶やさずに育てる。それが飯沼栗の栽培方法の一つです。」と語ります。
収穫後は洗浄や燻蒸処理を施し、0℃の冷蔵庫で2~3週間オガ粉とともに冷温貯蔵。これにより乾燥を防ぎながら糖化を促します。貯蔵後の糖度は一般の栗の2~3倍にも。その後、組合員全員による合計3回の選果を経て出荷されます。こうした手間を惜しまぬ工程こそが、最高級の栗を生む秘訣です。
料亭や菓子職人も愛する最高級栗を味わう
飯沼栗の大きさは通常の3~4Lサイズに相当し、1粒40~50gにもなります。選果では傷の有無や形の美しさなどを厳しく審査。基準を満たさなかったものは一般栗として流通します。「飯沼栗」と名乗れるものだけが、一般の栗が少なくなる11月頃に東京の豊洲や大田、淀橋に出荷されます。取引後は料亭や和菓子専門店などで、栗を丸ごと一粒使用する料理として重宝されています。一般に入手するには、同組合のオンラインショップやふるさと納税など、限られた方法でのみ可能です。
東ヶ﨑さんは「圧力鍋で一気に茹で、半分に切ってスプーンですくって食べてください。茹でたては栗きんとんのように黄金色で甘いですよ」と話します。さらに栗ご飯もおすすめ。皮をむいた栗を、米やモチ米と少量の塩で炊くだけ。栗が艶やかな飴色に変わり、ねっとりと濃厚な甘さが際立ちます。香りと甘さを存分に味わえる、まさに“最高級”と呼ぶにふさわしい逸品です。
飯沼栗を次の世代へ
飯沼栗を育てる上で欠かせないのは、適度な水分と昼夜の寒暖差。ふっくら丸い実が育たなければ飯沼栗とは認められません。しかし、近年の猛暑で水分が実まで届かず枯れる木が増えているといいます。「こればかりは天の恵みに頼るしかありません。だからこそ、剪定する木を見極め、水分がきちんと実まで届くようにしないとならないのです。この温暖化の中で、飯沼栗として販売できる栗をどれだけ育てられるかが大きな課題です。」と東ヶ﨑さんは語ります。
さらに深刻なのが後継者問題です。「私は父の飯沼栗を継ぐために脱サラしましたが、農家は減る一方。飯沼栗は規格が厳しく、新規参入も容易ではありません」といいます。現在、組合に所属する農家は8軒。そのうち東ヶ崎さんと同世代は4軒にとどまります。次の世代へバトンを渡すことは容易ではありません。
日本が誇る希少な飯沼栗。その甘さと輝きを、これからの世代にも受け継いでゆく挑戦が続いています。
太い幹を残し新しい枝を剪定、枝にいく栄養を実に集め大粒の栗に仕上げます
「これはまだ若すぎる木なので、もう少し時間をおかなければ美味しい栗ができないんです。」と東ヶ﨑さん