誰もがスポーツを楽しめるように 水戸ホーリーホック「クノスフェアビデ」 2023年12月に設立された水戸ホーリーホックの知的障がい者サッカーチーム「クノスフェアビデ」。 クノスフェアビデとは、ドイツ語で蕾を意味する「クノスペ(Knospe)」と、繋ぐを意味するドイツ語「フェアビンデン(Verbinden)」をかけ合わせた造語。スポーツを始めたい、楽しみたいという芽、蕾を大きく咲かせるために、生涯にわたって繋ぎ、誰もがスポーツを楽しめる環境を作っていくことを目指して、選手達の意見や想いをもとに名付けられました。 現在は茨城県内在住の10~30代約25人が所属し、メンバーの3分の1は国体を経験している精鋭達。水戸市内で毎週練習を積み、週末は大会や練習試合などを重ねて、精力的に活動しています。
そして、2024年12月14日、15日の2日間、茨城県城里町小勝の七会町民センターアツマーレで水戸ホーリーホック主催の全国知的障がい者サッカー選手権「太平電業カップ」が開催されました。 記念すべき第1回大会は、Jクラブ所属のチームを中心に、神奈川県の横浜F・マリノスフトゥーロ、静岡県のアスルクラロ沼津ジャンプ、沖縄県のRSSセリオーレ・パラデイロを招待し、4チーム約70人が参戦。 延べ約280人の観客が見守る中、30分ハーフの総当たりの予選リーグ後、順位決定戦で全国の知的障がい者サッカークラブの頂点を目指し熱戦を繰り広げました。
激闘!4チーム総当たりの予選リーグ戦 クノスフェアビデの初戦の相手は横浜F・マリノスフトゥーロ。 2004年に発足したJリーグ初の知的障がい者サッカーチームには130人の選手が所属し、障がいや技術に応じてA~Eのカテゴリーに分けたチーム編成をしている全国屈指の強豪です。
前半、クノスフェアビデはパスカットを意識して良い守備から良い攻撃に繋げようとしましたが、フトゥーロの攻撃的なサッカーに終始圧倒されてしまいます。 前半に3失点すると、後半は6点を失い、0-9で完敗を喫しました。
続く2戦目は、5年前から活動を続けるアスルクラロ沼津ジャンプとの対決。2試合連続でJクラブに敗れる訳にはいかないクノスフェアビデは、クラブの威信を懸けて奮起します。
前半11分、エースストライカーの小澤日向選手が強靭なフィジカルを活かしたドリブル突破でロングカウンターを決め切り、チーム初得点を奪います。しかし、一瞬の隙を突かれて立て続けに2点を失ったクノスフェアビデ。その直後に左サイドから小澤選手が上げたクロスに、白塚裕樹選手が中央で合わせて同点に追いつき、押し上げムードで前半を折り返します。 すると後半、少ないカウンターのチャンスを再びモノにし、3-2で今大会の初勝利を飾りました。
予選ラストで対戦したのは、昨年8月に発足した沖縄県で唯一の知的障がい者サッカーチームのRSSセリオーレ・パラデイロ。クノスフェアビデは予選2位で通過するには勝利が絶対条件。積極果敢なサッカーで挑みました。 しかし球際の攻防で相手に上回れてしまい、ピンチの場面が連続して18分に失点。カウンターで攻め上がるシーンや絶好の位置からのフリーキックもありましたが、後半に再び失点を許し、0-2で予選3位通過となりました。
躍動する水戸ホーリーホッククノスフェアビデの選手
3位決定戦ではクノスフェアビデが勝利! キャプテンが決めたフリーキック そして迎えた大会2日目、沼津との順位決定戦。前半2分で千葉翔太選手が幸先よく先制点を奪いましたが、次第に相手のペースにはまり、前半で3失点を喫する危機的状況に追い込まれます。
窮地に立たされたクノスフェアビデ。しかし、後半にドラマが待ち受けていました。 後半スタート直後に千葉選手が1点を返すと、その10分後にまたもゴールを挙げ、ハットトリックでスコアを同点に戻します。そして試合残り2分、絶好の位置でフリーキックを獲得。このチャンスでキッカーを務めるのはキャプテンの西岡祥汰選手です。 「実は2週間ぐらい前の試合でも同じようなシーンがあって決めていたので、自信はありました。『ここで決めて、チームを勝たせたい』『キャプテンとして取り返さないとダメだ』と思って直接狙いました」
ゆっくりと息を吐き、西岡選手の放った渾身の直接シュートはネットを大きく揺らし、クノスフェアビデが遂に逆転に成功。アディショナルタイムにも小澤選手がダメ押し弾を決め、見事5-3で勝利しました。 この結果、優勝は全試合完封勝利した横浜F・マリノスフトゥーロ、2位はRSSセリオーレ・パラデイロ、3位はクノスフェアビデ、4位はアスルクラロ沼津ジャンプ。
優勝した横浜F・マリノス フトゥーロのシャーレアップ また、各クラブ1名が選出される栄えある優秀選手賞は千葉選手が獲得しました。
クノスフェアビデの加藤貴之監督は「大量失点が多いチームなので、今回の大会は守備をテーマに取り組みました。失点はしましたが、果敢にチャレンジしていて、負けている中でも選手は良くなっていました。この2日間だけでもチームとして成長できたので有り難いです」と今大会を総括しました。
誰もが活躍できる社会を目指して 水戸ホーリーホックの新たな挑戦 知的障がい者サッカークラブは未就学児から大人まで全国的に多くのニーズがありますが、Jリーグ全60クラブ中、チームを持っているのは僅か6クラブ。 知的障がいの知識も持つ指導者が不足していることや、遠征費を含む運営費の確保が難しく、まだ受け皿が足りない状況が続いています。今大会はそんな課題解決の一助になるべく、遠征費が全て補助され、クラブや選手の負担なく、大会出場の機会が創出されました。 また、パラアスリートの支援を続ける太平電業、障がい者雇用を推進している三井住友銀行やJX金属など、「誰もが活躍できる社会」を企業が後押ししている現状について、全選手に向けて紹介されました。
日本サッカー界のレジェンドで、現在は日本障がい者サッカー連盟会長を務める北澤豪さんは、今大会のアンバサダーとして来場。「障がいを持たれている人達のスポーツの環境をいかに平等に提供ができるか、これからの街づくりに関わると思いますし、地域全体が変わるきっかけにもなるのではないかと思います。今大会は次世代に向けて大きな一歩だと感じます」と語りました。
大会アンバサダー北澤豪氏も来場し激励 そして、大会を主催した水戸ホーリーホックの小島耕社長は、「今後は8チーム、16チームと参加チームを増やし、できれば海外からも招待したいです。この大会を目指すチームが増えることを願っています」と大会の規模を拡大し、継続的に開催していく方針を示しています。 『新しい原風景をこの街に。』 これは水戸ホーリーホックの社会との約束であるブランドプロミスです。 知的障がい者サッカー界の最高峰の大会を目指して、水戸ホーリーホックの新たな挑戦が始まります。
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