筑波山で作陶活動とギャラリー経営をしている「陶 梅田」の梅田夫妻を紹介します。
“使われてこそ器”を信念に、手作りの温かみを感じられる器を作り続けています。
日本が敗戦した1945年、食糧事情が厳しかった日本では、国の政策で全国各地の開拓事業が進められていました。「陶 梅田」の陶工である梅田八主守さんも開拓農民として、現在の窯がある筑波山の中腹に家族で引っ越してきたと言います。「元々農業をやっていたわけではないので、ここが農業に向いていない土地だということも分かりませんでした。そんなことを言っていられる状況ではなかったですからね」と当時を振り返ります。
農業に従事する傍らで一念発起し、大学入学資格認定試験を受けて合格。25歳で大学に進学後、都内の大手広告代理店に入社しました。
長年サラリーマンとして働いた八主守さんですが、定年退職後のことを考え、筑波山で陶芸をしていた母親の元で作陶修行を開始。会社人生から一線を退いた61歳の時に、いよいよ本格的に陶芸家の道を歩み始めました。その後、自作陶器の展示販売を行うギャラリー「陶 梅田」を1993年に千葉県松戸市でオープン。2004年に現在の場所である筑波山の窯場にギャラリーを移転しました。
陶 梅田にある登り窯は現在も稼働中
“使われてこそ器”を信念に作り続ける
梅田八主守さんは1932年京都生まれ。1982年に作陶修行を始め、1992年に本格的な制作を開始。2019年には茨城県郷土工芸士の認定を受けた。
八主守さんは年間で およそ2~3千点もの作品を制作する
陶器を焼き上げるには1200~1300度もの高温が必要
八主守さんが作る「つくばね焼」は、筑波の土、筑波山の草木の灰を使った釉薬(※)などを使用し、登り窯で作っているのが特徴です。
登り窯で陶器を焼く作業は7日間にも渡り、最後の2、3日は徹夜で火の管理も行います。「寝ずの番ではありますが、陶芸教室の生徒も手伝いに来てくれるんですよ」と話す八主守さん。登り窯を持つ陶芸家の数はどんどんと少なくなっていて、陶芸教室の生徒もぜひ手伝いたいと来てくれるのだそう。電気釜やガス釜では作れない作品作りができるのも、つくばね焼の魅力なのです。
※釉薬(うわぐすり):素焼きの陶器の表面に塗る薬品。光沢を出し、水の浸透を防ぐ
つくばね焼は、1998年に茨城県郷土工芸品の指定を受け、八主守さん自身も2019年に茨城県伝統工芸士に認定されました。その作品を展示販売しているのが、奥様の章子さんが運営するギャラリーです。ギャラリーを彩っている生け花は、章子さんの手による物。「筑波に来てから、毎日移り変わる自然の美しさに感動しています」と話します。筑波山の四季折々の美しい花や木が生けられたつくばね焼をぜひご覧ください。
このギャラリーは、梅まつり期間中は特別に毎日公開されます。美しい梅を楽しむのはもちろん、陶芸作品を通して芸術を愛でてみてはいかがでしょうか。
「物作りは楽しいです」と話す梅田八主守さん。奥様の章子さんは ギャラリーを運営し、二人三脚で歩み続けている
登り窯で焼くと、壺に付いた灰が釉薬と反応。自然釉(しぜんゆう:別名「灰かぶり」)と呼ばれるこの現象もつくばね焼の特徴です。
筑波嶺(つくばね)という筑波山を表す言葉から「つくばね焼」と命名したのだそう。八主守さんのお母様が萩焼の陶工とともにこの登り窯を構えたのがつくばね焼の始まり。
手作りの窯
「筑波嶺(つくばね)」の形をした作品たち
2~3百点の作品が置いてあるギャラリー
約8千坪の敷地に「つくばね焼」のギャラリーや陶芸教室用スペース、窯などが点在する。体験教室や陶芸教室は随時受付中。また、展示販売を行っているギャラリーは、通常土日祝日のみのオープンだが、梅まつり期間中は毎日公開予定。(2/18(土)~3/19(日) 10:00~16:00)
住所:つくば市沼田1700-8
TEL:029-866-2688
※陶芸体験・陶芸教室をご希望の方は事前にお問合せください
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