ショートストーリー
明日への贈り物 Episode40
子どもの腕を掴んで怒鳴る母親 その姿を前に何もできない自分

いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
ふとした瞬間に遭遇する日常的な虐待の怖さ
夫と息子の3人で、朝から子ども回のお祭りにやってきた。みんなでかるたや凧上げをして、会場内は楽しそうな親子ばかり。
その中で、どこのグループに入ることもなく、母親と小学生の兄弟2人で参加する家族がいた。その兄妹は些細なことですぐに叩きあいの喧嘩になっていた。「普段は見ないけどうちの子と同じ学校なのかな」何となく気になるまま、午前が過ぎていった。
「おれのお餅食べるなよ!」配られたお昼の雑煮を食べていた時、男の子の声が響き渡る。振り向くと、先ほどの兄が妹に掴み掛かっている。「何やっているの!」兄の腕を掴むと、腕が外れるのではないかと心配になるほどの力で引きずって会場の外に行ってしまった。その後ろに妹も付いて行く。会場の外から母親の怒鳴る声が聞こえていたが、その家族が戻ってくることはなかった。
「さっきのお兄ちゃんとお姉ちゃんは大丈夫かな?」と楽しい1日を終えた帰り道に、息子がふと言葉にする。「きっと大丈夫だよ」私は笑顔で返事をした。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています
