世代を超えて守り受け継ぐ！櫻塚おはやし保存会

聞くのはもちろん、目でも愉しめるお囃子。日本の夏の風物詩である祭りには欠かせない重要な存在です。山車に積まれた大小の太鼓と、篠笛が奏でる和の音色。威勢の良い神輿と一緒に町を練り歩きながら、提灯の明かりが目の前を通り過ぎ、遠く消えて行くその余韻までが郷愁を思わせます。
　お囃子も祭りと同じく、日本全国の風土に合わせて変化してきた伝統文化に数えられますが、筑西市の関城地区に生まれ育った子供たちは、誰しもが一度は経験することがあると言います。関城地区の小学校高学年を対象に行われる篠笛教室を通じて、地元に根付く伝統芸能「関本祇園囃子」に触れる貴重な機会であり、関本祇園囃子を先達から受け継ぎ、次世代へとつないでいくことを目的とした団体「櫻塚おはやし保存会」のメンバーもまた、その篠笛教室がお囃子を始めるきっかけだったと言います。
　今回は櫻塚おはやし保存会から代表して、会長の坂入孝則さん、副会長の上野政昭さんを始め、若手の坂入雅樹さんと谷貝佳那美さんの4名にお話をお伺いしました。

山車は平成４年に完成。祭りが始まると提灯を灯し、華やかなお囃子を奏でながら地区内を練り歩きます。

関本地区に代々伝わる関本祇園囃子の歴史は古く、約300年前の江戸時代享保年間にまでさかのぼります。稲敷市の大杉神社に始まる大杉囃子が始まりと言われ、主な交通手段が船舶だった頃、利根川から鬼怒川へ、商売人の出入りとともにその文化が伝わりました。大杉囃子は魔除けや悪魔祓いとしても知られ、日本全国へと波及。その土地ごとの独自性や風土なども交えながら、多種多様な祇園囃子に形を変えて今日の日本に残っています。戦後の高度成長期に一時は途絶えかけましたが、その後の祇園囃子の人気再燃に伴い、昭和54年に5名の有志が発起人となり、櫻塚おはやし保存会が設立されました。
　深い歴史を持つお囃子を演奏するにあたって、櫻塚おはやし保存会では曲にアレンジを加えたりすることなく、そのままの形と習わしを伝承し、演奏するという特長があります。メンバー構成は、下は高校3年生から上は70代までが揃う幅広い年齢層の団体ですが、それぞれの楽器の指導がコミュニケーションのきっかけにもなり、演奏にも調和が生まれるそうです。「やはり協調性が大切で、どれかが目立ってしまうのはよくない。反対に、どれかひとつだけの楽器での演奏というのも、出来そうで出来なかったりします。周りの音を聞きながら演奏するので、みんながいないと演奏出来ないという面もあるんです」そう語る坂入会長。副会長の上野さんは「そのための日頃の練習でもありますし、揃えることと綺麗な音を出すことには気を付けています。その成果が本番で生き、綺麗にタイミングが合うと鳥肌が立ちます」と笑顔で続けました。

場の雰囲気を見極め、演奏する曲を決めていきます。篠笛はそんなお囃子の司令塔的存在です。

坂入雅樹さんは会長の実の息子さんであり、常にお囃子が身近な存在であったそうです。「お囃子は父に付いていって知りました。中学生の頃にステージに立つ機会があり、そこで面白さを感じて、もっとお囃子をやりたいと思ったんです」
　谷貝佳那美さんは言います。「夏が近付くと頭の中はお囃子のことばかり。毎年のように課題が出て来たりするんですが、先輩方に教えてもらいながら少しずつ解決していけたらと思います。いつかは、お囃子と言えば櫻塚と言われるくらいにしていきたいです」と熱い想いを語ってくれました。　それぞれのメンバーが抱く想いは、伝統芸能を通しての郷土愛のように思えます。時代や世代が変わっても、変わらない形のままのお囃子が身近にあることこそが、地元の人々に深く愛され続けている理由なのだと感じました。

女性メンバーは現在４名。繊細な音色や、女性が持つ華やかさが魅力的です。