下妻市を流れる鬼怒川の河川敷で毎年開催されている「花とふれあいまつり」。約1.5ヘクタールの広大なポピー畑には鬼怒フラワーラインとして県の内外から観光客が訪れる。
多くの人の憩いの場として広く認知されたこの場所に、平成27年9月、豪雨による水に被害が襲った。次の「花とふれあいまつり」準備期間中に迎えた窮地と、それを救い、支えた人々の取り組みに迫った。
(※内容は2016年4月25日時点のものです)
毎年春を迎えると、色鮮やかな花々が咲き広がる鬼怒川の河川敷。鬼怒フラワーラインの名称で親しまれ、地域住民の憩いの場だけにとどまらず、県内外から訪れる大勢の観光客の目を楽しませている。
しかし、この光景が実現されるまでには並々ならぬ苦労もあった。鬼怒フラワーラインの管理と毎年5月に開催される『花とふれあいまつり』を運営する『花と一万人の会』の飯島順一会長は言う。
「私たちが子供の頃は、鬼怒川の水辺は唯一の遊び場でした。学校にプールなどもなかったので川で泳ぎを覚えたりと、学びの場でもありました。けれど、大人になって気付いた時には野ざらしの原野になっていて背丈ほど伸びきった葦や雑草、不法投棄によるゴミの散乱などで気軽に近付くことも難しいほど荒廃している状態でした」
「花と一万人の会」飯島順一会長
その惨状を目の当たりにした住民たちが立ち上がり、自分たちの力で鬼怒川河川敷の環境整備を始めようと平成3年に設立されたのが『花と一万人の会』だ。年間を通して河川敷の清掃活動や除草、花畑の管理の他、河川利用者への愛護意識の啓蒙も行う。
その甲斐あって水辺は昔のきれいな頃の姿を取り戻した。もちろん、その中で忘れてはいけないのは、地域に暮らす地元住民の協力もあったこと。会の名に含まれる一万人とは、この会が発足された旧千代川村の人口から由来する。「ちょっと素敵なまちづくり」のキャッチコピーの下、すべての住民が一体となり、協力し合って守っていこうという想いが込められている。
保全活動の中では、隣接する大形小学校などの子供たちの協力も欠かせない。まつりが終わるとポピー畑は一部を刈り取ってさつまいもを植える。10月にそのさつまいもを収穫し、ポピーの種をまく。芽が顔を出す3月には草取り交流会が開催され、ポピーの芽と雑草を見分けながら、イベントとして楽しみつつ季節を通じた貴重な自然体験を行っている。
また、収穫したさつまいもは、オリジナルレシピで作られる『ポピー大福』の原料にもなる。紫いもの餡と生クリームの程よい甘さと、ポピーの花をイメージした断面の愛らしさから下妻市を代表するご当地スイーツでもある。
「一度食べたらリピーターになる」と飯嶋会長お墨付きの限定スイーツ。花とふれあいまつりでは登場するたびに完売となっているので、要チェック!
憩いの場、学びの場として再び活用され、下妻市の顔のひとつとして広く認知された鬼怒フラワーラインに悲劇が起こる。平成27年9月に発生した関東・東北豪雨による水害だ。当時のことを飯島会長はこう話す。
「ポピーの種をまくために、土を柔らかく整えておいたのも流され、さつまいも畑も水をかぶってしまいました。大量の土砂や石、流木で足を踏み入ることも出来ず、無力感に襲われもしました」しかし、このままでは昔の荒れた河川敷に戻ってしまうという危機感や、同じ会の仲間や手伝ってくれている地域住民からの復活を望む熱い声援を受け、早急に復旧活動を開始。そして被害の翌10月には子供たちと一緒にポピーの種まきを行った。
「25回目を迎える今回は、なんとしてでももう一度ポピーを咲かせたいという気持ちでいっぱいです。水害の痕跡はまだ残っていますが、その中でも少しでも多くのポピーを咲かせることが出来ればと思っています」
下妻市の5月の風物詩となった鬼怒川沿いの満開のポピー畑。子供から大人まで、この地に暮らす人々の故郷に寄せた想いが、訪れる人々の心にも届きますように。
*2016年5月15日「第25回 花とふれあいまつり」開催*
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【同時開催】鬼怒川地域交流 Eボート大会
■平成27年9月…豪雨による深刻な被害
重機を使ったり手作業で運んだり、急ピッチで進む復旧作業。大変な作業ではあったが、「花とふれあいまつり」開催への想いが人々を突き動かした。
■平成27年10月…ポピーの種まき
例年通り、ポピーの種まきを実施。地域に住む住民や子供たちも参加。