鹿島臨海鉄道のルーツであり、全国の物流を支える「神栖駅」

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鹿島臨海工業地帯の物流を支える貨物専用の駅

駅構内にある車両庫。ここで整備点検が日々行われている

日本国有鉄道(国鉄)、茨城県、地元企業の共同出資により、昭和45年11月12日に開業

貨物から旅客になった鹿島臨海鉄道

(※内容は2017年9月25日時点のものです)

県下最大の工業集積を誇る鹿島臨海工業地帯。その一角にある大きな車庫に、白赤青のラインが入った1台の機関車が止まっています。
ここは神栖駅敷地内にある、鹿島臨海鉄道の車庫。神栖駅は貨物専用の駅として48年間、同じ場所で工業地帯の物流を支えてきました。

元々神栖駅を管理運営する鹿島臨海鉄道は、昭和44年、鹿島臨海工業地帯の開発に伴う産業インフラ整備の一環で設立。
当時は神栖駅を本社とする会社で、生産品や原料を運ぶ貨物専用の鉄道でした。
設立の翌年には国鉄の北鹿島駅(現・鹿島サッカースタジアム駅)から神栖市の奥野谷浜駅を結ぶ19・2キロの鹿島臨港線が開通。工業地帯の輸送の動脈として、地元の経済発展に寄与していったのです。

しかし順風満帆とはいかず、日本経済の停滞やオイルショックの余波を受け、経営が不振に。
すると昭和53年からの5年間、開港したばかりの成田空港へ飛行機の燃料を輸送する業務を国から請け負い、黒字に回復。
同時期に、北鹿島駅から鹿島港南駅(昭和58年に廃止)に人を輸送する旅客営業を初めて実施しました。こちらは朝、昼、夕の一日3往復のみの運行でしたが、神栖駅も神栖市民の移動手段として利用されていた時期があったのです。鹿嶋まつりでも臨時列車が走っていたのは、記憶に新しいところです。

コンテナの輸送の台頭で鉄道貨物が再び脚光

ピンチと成功を繰り返して現在に至る

再度、暗雲が立ち込めたのは、昭和59年。国鉄のダイヤ改正により合理化が図られ、鉄道貨物の輸送量が大幅にダウン。なんと今までの半数に縮小を迫られました。
会社存続の危機に瀕した鹿島臨海鉄道は、国鉄に替わって建設中の鹿島線(水戸駅から北鹿島駅間)を譲り受けることに。そして、国鉄・芝浦駅の運営や貨車の解体作業なども並行して取り組み、昭和60年3月に大洗鹿島線、北鹿島駅からJR鹿島神宮駅への乗り入れを合わせて旅客営業を本格的に開始したのです。

そして昭和62年、国鉄の民営化によって日本貨物鉄道株式会社(JR貨物)が発足。鉄道貨物輸送の見直しが図られました。
青函トンネル、本州四国連絡橋など海を渡る鉄道網が整うにつれ、鹿島臨海鉄道の貨物量も増加に好転。次第にトラックと鉄道車両の両方に積めるコンテナ貨物での輸送へと時代がシフトし、鉄道貨物が再び脚光を浴びるようになったのです。

鹿島臨海鉄道も昭和59年からコンテナの輸送をスタート。神栖駅は平成5年に5トンを超える荷物も乗せられる20フィートコンテナ、平成9年には海上コンテナの輸送にも対応。平成19年にはコンテナを積み下ろしの専用ホームも運用を開始して、貨物駅としてより利便性を追求してきました。

東日本大震災時は神栖駅や本線に地震と津波が襲い、全線不通となる壊滅的な被害を受けましたが、3ヶ月後には完全復旧。今では震災前と同様に、地域の物流を支える貨物輸送のローカル線として、鹿島臨港線は毎日運行中です。

車両の整備やコンテナの積み下ろし作業に奮闘

神栖駅、神栖駅長の仕事の裏側

「ダイヤの乱れが少ない鉄道は安定的な輸送が実現できますし、事故もほとんどありません。道路輸送よりも二酸化炭素の排出量も削減できて、環境への負担も少ない。鉄道とは我々の生活になくてはならない輸送手段なのです」
そう力強く語るのは、神栖駅長の木内正儀さん。木内さんは昭和53年に入社。神栖駅や大洗駅で踏切担当、車掌、運転士、乗務担当助役などを経て、昨年、駅長に就任しました。
今は信号係を兼任しながら、コンテナ輸送を軸とする貨物営業部の17人、機関車の整備などを担う車両区10人を取りまとめています。

約6万9000平方メートルの広大な敷地を誇る神栖駅。その線路は14本もあり、その内3本が隣の駅への輸送用です。他は機関車の方向転換、車両の保管、コンテナの留置や積み下ろしなど、様々な用途で使用されています。
駅構内には車両庫が点在し、鹿島臨海鉄道で使用される旅客用や牽引用の車両の整備や清掃、給油、様々な鉄道会社の車両の解体作業が随時行われています。

神栖駅で主に扱う荷物は、一般家庭の引っ越しの荷物から醤油、米、油などの食品、合成ゴムや薬品などの工業用品など様々。JRへのハブ駅となる鹿島サッカースタジアム駅まで、一度に最大18両・780トンのコンテナを運んでいるのだそうです。
「今後は新規の顧客を更に開拓し、顧客のニーズに応えながら、鉄道輸送で地域を支えていきたいです」と木内さん。

国も物流における効率化と環境対策の一貫で、自動車や航空機による輸送から、鉄道や船舶を中心とする輸送への転換を推奨しています。
鹿島臨海工業地帯の貨物輸送の旗手である神栖駅はこれからも、地域経済をますますサポートしていくことでしょう。

鉄道貨物の重要性を強調していた神栖駅長の木内正儀さん

コンテナを乗せた車両は、牽引機関車「KRD64」が主に運行

駅の仕事を少しだけ紹介!

鹿島臨海鉄道の給油できる場所は神栖駅と、大洗駅の2つだとか!

駅ではひっきりなしに様々な運輸会社が出入りを繰り返す

車両点検の際には、両側で同時に点検をしていきます。それぞれを「海側」、「山側」と呼んでいるそう

車両庫は大きく、迫力満点!調整の他に、使えなくなった車両も神栖駅に運ばれる

神栖駅見学について

鹿島臨海鉄道 神栖駅

【住所】茨城県神栖市東深芝22-1
【電話】0299-92-0775

駅はトラックや大型重機が出入りしているため、見学の際にはあらかじめお問い合わせください。

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