ショートストーリー
明日への贈り物 Episode39
母親としてありえない行動が疲れた心身をさらに追い詰める
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
イヤイヤ期の息子に我慢の限界 衝動的な行動に涙の後悔が襲う
息子が三歳のイヤイヤ期に突入したころ、毎日はまるで終わりのない戦いのようだった。朝食のメニューに始まり、服の選び方、遊びたいおもちゃなど、何を言っても「イヤ!」と返される日々。何とか気持ちを落ち着かせようと深呼吸をしながら対応していたけれど、その日は特に大変だった。
夕方、疲労困憊の私に追い打ちをかけるように、息子が癇癪を起こし始める。お気に入りのおもちゃがうまく動かないことに腹を立てた息子は、おもちゃを私の方に投げつけてきた。疲れと苛立ちがピークに達していたわたしは、痛みに顔をしかめながらとっさにそのおもちゃを息子に向かって投げ返してしまった。
息子に当たることはなく、壁にぶつかって壊れるおもちゃ。その音にハッと我に返った瞬問「なんてことをしてしまったんだ」と青ざめる。
一瞬固まった後、大泣きし始める息子。そんな我が子の泣き声を聞いたとき、私も自分のしたことの重さに耐えられず、涙が溢れて止まらなかった。何とも言えない感情の渦の中、息子を抱きしめて「ごめんね、怖かったね」と何度も繰り返す。息子も私の涙に気付いたのか、少しずつ小さくなる泣き声を聞きながら二人でしばらく抱きしめあっていた。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています