ショートストーリー
明日への贈り物 Episode35
孤独な育児
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
児童虐待を報じたニュース 一人子育てに追い詰められるママ
この春、わが家に初めての子どもが誕生した。待望のわが子を腕に抱いたときには夫婦揃って喜びに溢れた。そして退院後、家事育児を全て私一人でこなさなければならない日々が始まった。夫に協力を求めたが、彼も仕事で忙しく、育児に時間を割けなかった。
他の子に比べてグズりやすい息子を連れての外出は、周囲の目が怖くて緊張の連続だ。次第に家に籠ることが増え、誰とも話さずに気持ちが通じない赤ちゃんと二人だけの閉ざされた世界で生活するのが辛かった。
「私だけの時間も居場所もない。毎日冷たいご飯を食べる私はただの子育てロボットなのかな」。クリスマスで陽気な世間と裏腹に、息子の世話に振り回されて途方に暮れる私。体力も尽き、悲しみと怒りで胸がざわついてしまう。あんなに望んでいたわが子なのに。
ふと気が付くと、テレビで虐待のニュースが流れている。ある母親が生後数か月の乳児に手を掛けたという。なんて酷い事件……。でも、それだけじゃない。「この母親は明日の私だ」、と冷静にテレビを見つめる自分がいた。追い詰められた母親の気持ちにスッと共感してしまいそうな自分に気付き狼狽えた。
「私は彼女とは違うけど気持ちを理解できる。私は必死に自分を制御できてるだけだ」
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています