ショートストーリー
明日への贈り物 Episode34
暗闇に揺れる白い光
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
夜の公園で一人過ごす児童 危険から守るための大人の義務
通勤途中にある児童公園でその少女を見かけるようになったのは去年の夏のこと。その公園は郊外の住宅街の一角にあった。
ある夜、公園の前を車で通ると一人でブランコに乗る小学生くらいの少女が目に留まった。時計の針は夜7時を回り既に薄暗かったが、夏場は日も長く、その時は気に留めていなかった。
またある夜、公園を通ると少女がブランコに乗っていた。時刻は夜9時を指している。
『あの時の子だ。こんな時間に何で一人で』
その夜以降、私は公園を通る度にブランコに目をやった。少女がいなければホッとし、ブランコが揺れている夜は気掛かりが残った。辺りは夜は人通りがなく、公園は真っ暗だ。何か事情があるのか。犯罪被害に遭わないか。
季節が変わり秋から冬になっても夜の公園に度々少女の姿があった。声を掛けようか。何度も迷ったが、知らない男性の声掛けに少女が怯えるのではと思うと踏み出せなかった。
その年の師走、夜10 時を回り仕事納めを終えていつもの公園を通ると、そこに少女の姿があった。冷たい雨が降る暗闇で、手にした黄色い傘とスマホの白い光だけがキーキー揺れている。私は意を決して車を停めた。あの子のことを、きっと今すぐ知らせるべきだ。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています