ショートストーリー
明日への贈り物 Episode27
「試合に出られないなら辞めろ」子どものスポーツに罰を与えた父親
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
父の失望に傷つきながらサッカーを離れていった少年
U君がサッカーを始めたのは小学2年の春の頃。「一緒にやろう!」と保育園で仲良しだった息子を誘ってくれたのもU君だった。
二人が通う少年団は20人もの同学年生が集まる大所帯で、大会では全員が試合に出る事はできない。U君を含む数人が大事な試合でいつもベンチから外れて試合を見つめる姿には、親でなくとも胸が締め付けられた。
U君は誰にも優しく、ユーモアも持ち合わせた人気者だ。練習ではいつも真剣にボールを追い、ピッチを離れると自然に輪の中心になるムードメーカー的な子でもあった。ただ、U君のパパは、しきりに他の子とスキルを比べたり、試合に出られなくてもニコニコしている我が子への苛立ちを隠さず、試合に出れば必ず応援席から強い言葉を投げた。その度にウン、ウンとパパに頷いていたU君。でも、いつしかパパは試合も見に来なくなった。
春休みに入り、5年生になって初めての練習試合。そこにU君の姿はなかった。別の子の保護者の話によると、先月の大会でレギュラーになれなかったら少年団を辞めるよう、パパと約束していたようだという。
『ママ、U君、今日の試合休みだったよ』
「そうだね、珍しいね。どうしたんだろうね」
息子にはそれしか答えられなかった。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています