ショートストーリー
明日への贈り物 Episode19
顔の見える地域の取り組み 毎日そこに居てくれる人への感謝
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
通学路に立ち、児童の安全と成長を見守っていた父の思い出
娘は小学一年生。
学校までの約1㎞、児童の足だと20分以上歩く道のりを、登校班の列に混じり、少し緊張した面持ちで通っている。
娘の通学路には、狭い路側帯の横を大型車が行き交う「危険個所」とされる場所がある。
そこを含め、要所の数カ所にボランティアの方が見守りで就いてくれることを保護者会に出席した妻から聞いた。
それを聞いて、僕は昨年亡くなった父の元気な頃を思った。
路線バスの運転手だった父は定年後、いずれ孫が通う小学校の見守り隊として毎朝夕に通い出した。
父の定位置は町内の信号機のない交差点。
ここを通る8つの登校班の児童をペアの方と二人で守り、3年間立ち続けた。
愛想の良いほうではない父が見守り隊になったのも、よその子どもを気に掛けるのも僕には意外だった。
いつも元気に挨拶するのは誰、この子は恥ずかしがり屋、この子はヤンチャだけど優しい、今朝あの子が包帯を巻いていた、下校時泣きながら歩いていた子…
一人ひとりの顔を見て、登下校の安全だけでなく日々の様子も見守っていた父。
いや父だけではない。
娘には、毎日見守ってくれている大人が周囲にいることを伝えていきたい。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています