ショートストーリー
明日への贈り物 Episode3
「何か出来ることはあっただろうか」 寂しさを抱えるこどもとの交流
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
孤独な母子家庭の子ども 心のどこかに残る私の後悔
Sくんは、小3の娘の同級生。いつもヨレヨレのTシャツにハーフパンツ姿で、まだ幼さの残る顔立ちをしている。
ある夏の日、近所の公園で19時を過ぎても一人で遊ぶ姿に思わず声を掛けてから、Sくんは時折我が家で過ごすようになった。会話を交わすうちにSくんが一人っ子で、お母さんと二人暮らしであることを知った。そして、お母さんに話しかけてもスマホを見ながら「また今度ね」と話を聞いてもらえない、授業参観にも来てくれないのだと不満を漏らす時もあった。彼が寂しそうに話すたびに、私はどう声をかけていいか分からずに「そうなんだ」とうなずくことしかできなかった。一方で「おばちゃんのご飯うまいね!」「リレーで1番取った!」と嬉しそうに話す一面もあった。
その冬、夫の転勤が決まった。引越しの日にお別れに来てくれたSくんの顔を見て、私は「元気でね」としか言えなかった。
しばらくしてSくんが万引きをして補導され、おばあちゃんに引き取られたと噂で聞いた。初めて彼を見かけた日から、学校や児童相談所に知らせていたら何かが変わっていたかもしれない。そう思うと、今も後悔の念が押し寄せる。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています