都内で引っ張りだこの干物を作る越田商店
越田商店では一日平均1800匹の鯖をさばく。多い時は8000匹を父子でさばいた日も。
天日干しする時間は天候、気温、風、湿度など様々な気象条件によって異なる。
話題の干物とは?
(※内容は2017年10月25日時点のものです)
口の中に広がるジューシーな脂、程よい塩気と甘味。
絶妙なバランスで魚本来が持つ旨味を存分に引き出した、ある鯖の干物が都内で人気を集めています。
干物と言えば和食が思い浮かびますが、実はこの干物はイタリアやフランス、スペイン料理店などでも引っ張りだこ。
そんな多ジャンルの料理人の舌を唸らせた逸品を生み出したのは、神栖市波崎にある越田商店。
3代目を務める越田英之さん、長男の竜平さん、英之さんの母・信江さんの家族3人で、干物を製造、卸、販売を行う店です。
人気の理由はつけ汁にあり!
47年物の熟成つけ汁に隠された秘密
この鯖の干物が多くの支持を集める理由の一つが、47年前から使い続ける熟成つけ汁にあります。これは、鯖から出るエキスや髄液によって液状となったもので、原料は水と塩のみ。このつけ汁には、なんと48種類の酵母菌や乳酸菌が住みついており、新種の酵母菌やミャンマーや南イタリアの特殊な菌も発見されたのだとか!この菌達が、越田商店の鯖を唯一無二の干物に仕上げているのです。
「俺達はこのつけ汁を預かっているだけ。苦しい時に助けてくれた人、いつも食べてくれる人がいるから、このつけ汁が今も残り、熟成し続けるんです」と英之さんはしみじみと語ります。
熟成のつけ汁の底には溶けきれていない塩がたっぷり!
塩分は飽和状態だが、不思議としょっぱくなく、まろやかな魚醤のような風味。
「この鯖じゃなきゃダメだって人がいる限り、頑張っぺ!」
倒産の危機から救った1本の電話
実は9年前、越田商店は倒産の危機に瀕したことがありました。
時代は、添加物や薬品を使って魚の臭みを消し、鮮やかに発色させた干物が主流。無添加の鯖は、見向きもされなくなっていきました。そして英之さんの父は「つけ汁を捨てよう…」と苦渋の決断をします。
そんな崖っぷちの中、運命を変える1本の電話が鳴り響きました。相手は、高田馬場にある定食屋。仕入先の魚屋の店主が急逝し、越田商店のものではなく別の鯖を出していた所、「これじゃダメだ!」と客からのクレームが相次ぎ、直接注文をしてきたのです。
その一報を受け、英之さんはすぐさまお店へ。到着すると、次々とサバ定食の注文が入る光景を目の当たりにしました。
「サバ定食以外を頼んだ客がいると、『バカヤロー!ここは鯖が旨いんだ!』とケチをつける常連客もいたり(笑)。それで波崎に戻ってからすぐ、『この鯖の味じゃなきゃダメだって人が一人でもいる限り、つけ汁を捨てずに頑張っペ!』って親父に言ったのよ」
こうして真摯に昔ながらの干物を作り続けた越田さん一家。
「食卓に笑顔と感動を届けよう」という一心で手掛けた鯖は、色んな縁を結び、今では注目を集める干物店となったのです。
魚のファンを増やす 干物の工房で恩返しを
「想いって物に宿って、受け取った人に届く」
越田商店がこれから目指すのは、“工房”の建設。干物店を開きたい人や越田の技術を学びたい人に製造方法も全てオープンにして教えたいと英之さんは語ります。
「想いって物に宿って、受け取った人に届くって信じているの。うちの鯖で人が笑顔になり、自分達も笑顔になる。そうやって俺は魚のファンを増やしていきたい。それが俺達は色んな人への恩返しになるんじゃないかと思うんだ」
作業場の壁には英之さんのかつての相棒達
持ち手はサラシを巻いて、グリップを調整している。
品質や漁獲量が安定しているノルウェー産の鯖を使用。日本の鯖より大きく、脂もたっぷり
これからの越田商店が目指すもの
越田さんの夢
越田さんは今後「海外の人に、本物の日本食を届けたい」と欧州での販売も計画中。
実はまだはっきりと決めた訳ではありませんが、「言ったからにはやるっきゃないね」と語ってくれました。
越田さんが思いを込めた美味しい鯖は、これからも人々を魅了していきます。
「日本の先人達が伝えてきたものを残さねば」と熟成つけ汁を“預かる”英之さん
加工場で鯖を直売!
越田商店
鯖の干物は蕎麦、茶漬け、味噌と牛乳で煮込む鯖鍋で味わうのもオススメ!店頭にて直売中です。
また、季節により他の魚も扱っています。
住所:茨城県神栖市波崎8233-9
TEL:0479-44-0473
営業時間:天候による
定休日:不定休
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