第一部 1994-2004 全てはここから始まった 過酷な環境だったJFL時代やJ2黎明期 水戸ホーリーホックの起源となるFC水戸が創設された1994年。第一部では当時の選手だった樹森大介トップチームコーチ、鳥羽俊正ヘッドオブコーチング、北川佳男ジュニアユースコーチが登壇し、クラブ創立から地域リーグを経て、JFLからJ2リーグに昇格し、前田秀樹監督の就任2年目のシーズンまでを振り返りました。
司会進行を務めた、冨田大介水戸ユース監督、細川淳矢トップチームコーチ、寺田忍さん(スタジアムDJ)、佐藤拓也さん(フリーライター) 登壇者の中で最古参の元選手である鳥羽さんは、JFL時代の水戸を知る一人。 経営困難でチーム存続が危ぶまれた際には署名活動なども経験し、Jリーグに上がれなければチームがなくなるとも当時の社長から言われました。昇格条件をなんとかクリアし、「JリーグからJ2加盟への承認の電話が来るのを、選手みんなで、事務所で待ちました」とJ参入時の様子を話します。
クラブ創立から地域リーグを経て、JFL(日本フットボールリーグ)からJ2リーグに昇格 水戸ホーリーホックがJ2に参入して今年で25年。J通算ゴール数は1,127点(2024年7月26日時点)を数え、その第1号の得点者が鳥羽さんです。 それは2000年のシーズン第2節大分トリニータ戦。マッチアップした片野坂知宏さん(現大分トリニータ監督)がオーバーラップした隙に裏を取り、少々アウトにかけてGK前川和也さん(元日本代表)から得点を決めた記念すべきクラブ初得点でした。 当時は固定の練習拠点がなく、水戸近郊のグラウンドを転々としていた時代。着替えは車内、シャワーはなく水道の水で汗を流し、土のグラウンドで泥まみれになって練習するという過酷な環境でした。一方で、当時の水戸には元ブラジル代表のFWジョン・パウロ選手が在籍し、高い技術を持つ選手とともにプレーする貴重な体験もできたと言います。
(写真左から)島羽俊正ヘッドオブコーチング、北川佳男ジュニアユースコーチ、樹森大介トップチームコーチ 続いて、話題はクラブの歴代で唯一の外国人監督であり、未だ謎多きバビチ・ブランコ監督(2003-2007)の時代へ。 「当時よくやっていた練習はフルコートでの2対2。走ることをすごく求められました。選手の実績は関係なく、調子の良い選手を起用していました」とブランコ監督を語る鳥羽さん。
クラブの歴代で唯一の外国人監督、バビチ・ブランコ監督 そして2003年に前田秀樹監督が就任すると同時に加入した樹森コーチは、チームメイトだった元日本代表の田中マルクス闘莉王さんについてのエピソードを披露。 「PKを獲得したのは自分だったのに、いつも蹴らせて貰えなかった」、「公式戦の緊張で下痢になる共通点があり、試合直前はいつも一緒に下痢止めと胃薬を飲んでいた」と破天荒で繊細な一面を明かしました。
元日本代表の田中マルクス闘莉王さんについてのエピソードを披露した樹森大介トップチームコーチ
第二部 2005-2010 水戸スタイル模索
粘り強い守備の源流となった「水戸ナチオ」
名ストライカーが活躍した攻撃サッカー
第二部では2008年~2009年の2年間で31得点を重ねた名ストライカーで、現在は立正大学サッカー部のコーチを務める荒田智之さんと、島田祐輝ジュニア監督の2人の元選手を迎えて、水戸スタイルの源流が作られた時代のトークが展開されました。
「水戸ナチオ」は水戸ホーリーホックを象徴した代名詞 この時代の前半期を支えた前田秀樹監督(2003-2007)は、「水戸ナチオ」と呼ばれる超守備的戦術を採用し、今もチームに受け継がれる粘り強い守備の源流を作った指揮官。時には0-2の状況でもチームは前に出ず、相手監督が記者会見で憤怒していた事もあった程の徹底ぶりだったそう。 その水戸ナチオが最も花開いたのが2007年J2第13節。国立競技場でラモス瑠偉監督率いる東京ヴェルディ1969に快勝(5-1で水戸が勝利)した試合は今もサポーターの間で伝説的なゲームの一つとして語られます。また、壇上でMCを務める佐藤さんが「前田監督がその試合の記者会見場にスキップしながら現れたんです」と当時の様子を明かすと、会場は大きな笑いに包まれました。
(奥) 島田祐輝ジュニア監督 (手前) 船谷圭祐さん 2008年に木山隆之監督(2008-2010 現ファジアーノ岡山監督)が就任すると、チームは攻撃サッカーに転換。その立役者だったFWの荒田さんは、「一年目は菊岡(拓朗)や村松潤君などからパスが出て来て、二年目は高崎(寛之)の周りを動いていたら、こぼれ球で点が取れていたかなと思います」と振り返ります。
当時を振り返る 荒田智之さん 数々のゴールの中で最も印象深いのは、過去未勝利だった相手に劇的勝利を決めた2008年のアウェイ、ベガルタ仙台戦。 2-2で迎えた後半アディショナルタイムに決勝ゴールを決めた荒田さんが「あの試合では最後に一発を狙っていました。相手のミス絡みだったのですが、いいゴールでした」と思い返すと、そのシーンをゴール裏で観ていたというMCの寺田さんは「ゴールが決まった瞬間から大号泣。試合が終わるまでずーーーっと涙が止まらなかったです。あんなの初めて」と当時の感動をあらためて噛みしめました。
推しメン総選挙レジェンド 2000票から選ばれた上位レジェンド11人を発表! 今年で10回目を迎えた恒例の「推しメン総選挙」。その名の通り、サポーターが“推し”の選手に投票して、人気順にランキングされる人気イベントです。
人気イベント「推しメン総選挙」。水戸らしい空気感が漂うコーナー アニバーサリーイヤーの今年は、過去に水戸に所属した推しレジェンド選手を選ぶ「推しメン総選挙レジェンド」も同時開催。するとなんと2,000票を越える投票が集まり、気になる上位11人の結果が発表されました。 1位 本間幸司(1999- 在籍) 2位 細川淳矢(2012-21在籍 水戸ホーリーホックCRC) 3位 鈴木隆行(2011-14在籍) 4位 前田大然(2017在籍 現セルティックFC) 5位 船谷圭祐(2013-18在籍) 6位 吉原宏太(2009-12在籍) 7位 塩谷 司(2011-12在籍 現サンフレッチェ広島) 8位 三島康平(2012-16在籍 現COEDO KAWAGOE F.C) 9位 小川航基(2019在籍 現NECナイメヘン) 10位 デルリス・フロレンティン(2005在籍・2010年逝去) 11位 伊藤涼太郎(2017-18、2021在籍 現シント=トロイデンVV)
上位11人で組んだフォーメーション。まるでドリームチーム
(写真左) 1位はやはり、『水戸の顔』とも言える現役レジェンド!本間幸司選手(写真右) 2位は現在、水戸ホーリーホックCRCを務める細川淳矢さん また、現日本代表のFWとして2022W杯でも活躍し、「育成の水戸」を日本サッカー界に広めた前田大然選手から30周年記念イベントに寄せたインタビュー動画が披露され、水戸での経験が現在の世界での活躍に繋がっていると胸中を語ってくれました。
前田大然選手(現セルティックFC)のインタビュー動画の様子 後編に続く「水戸ホーリーホック30周年記念イベント ~後編~」はこちらをご覧ください。
水戸ホーリーホック公式サイト
(試合日程、チケット情報など詳しくはこちらでチェック)