現在も増え続ける児童虐待を早期発見し、児童の安全確保に努める茨城県警察。同警察の人身安全対策課では「幼い命を守るためにも1人でも多くの方が地域を見守り、躊躇なく通報をしてほしい」と市民に呼び掛けています。
過去最高を更新し続ける県内の児童虐待の状況
児童虐待のケースは、身体的虐待、性的虐待、ネグレクト(養育の怠慢又は拒否)、心理的虐待の主に4つ。茨城県警が認知している児童虐待事案は全国の例に漏れず、心理的虐待の割合が圧倒的多数を占めています。
そして県内の児童虐待に関する警察から児童相談書への通告人員は平成27年で317人であったのに対して、昨年はおよそ5倍の1550人に。平均すると一日あたり4人の子どもたちが虐待の被害に遭っていたという痛ましい現状があるのです。
増加の要因としては、県民の児童虐待に対する意識の高まりによって、以前よりも表面化しやすくなったことが一つ。警察官が駆けつけた夫婦喧嘩などの事案で子どもがいた場合、心理的影響を必ず確認し、疑いがあると認めた場合は心理的虐待として積極的に通告していることが挙げられます。つまり、児童虐待の件数は数字だけ注目すれば、増加の一途を辿っているように見えますが、実は今まで見逃されていた事案が浮き彫りとなるケースが増えているのです。
事件化を未然に防ぐ早期発見を最重要視
メディアで報道されるような悲惨な事件があると、児童相談所(児相)の対応がフォーカスされますが、警察は児童虐待に関して一体どのような取り組みをしているのでしょうか?
県内の児童虐待に対応する茨城県警察本部生活安全部人身安全対策課では、最も重要視しているのが早期発見です。
同課警視の古橋英雄さんは「子どもは未来の宝。児童虐待は家庭内で潜在化していることが多く、深刻な被害に至る可能性があります。虐待が疑われる時点で早期の現場把握を徹底し、児童の安全確保を最優先とした対応に全力で取り組んでいます」と力を込めて語ります。
県内には児相が5ヶ所ありますが、中央児童相談所(水戸市)には現役の警察官を、その他3ヶ所には県警OBを配置。警察と児相の連携強化を図るだけでなく、学校、行政、医師などで組織される市町村の要保護児童対策地域協議会において、緊密に情報共有して、再発防止等の対策を取っています。初動での警察の冷静な対応や判断によって、地域の子どもたちを見守っているのです。
茨城県警察本部生活安全課 人身安全対策課長 古橋英雄警視
躊躇せず「いち早く」電話を。
そして「大人が見守ろう」
児童虐待は警察や児相といった公的機関だけではなく、社会全体で力を合わせて一人でも多くの子どもを救わなければなりません。そのためには、「いち早く」が第一のポイントです。「こんなの虐待じゃないかもしれないけれども、なんだか気になる」と少しでも感じたら、躊躇せず児相や警察に電話をしましょう。「110番、189番、通報はどちらでもOKです。早ければ早いほど、尊い命を守ることに繋がります」と語ります。
そしてもう一つは、「大人が見守ろう」。子どもは未来の宝。たとえ自分の子でなくとも地域の大人たちがさまざまな目線を持って、地域の子どもたちを見守る。県民一人ひとりが当事者意識を持つことが重要です。虐待を少しでも疑ったらすぐに通報。そして地域の子どもを見守る目を常に意識し、虐待される児童を一人でもなくすことを絶えず続けていきましょう。
児童虐待を疑われる家庭を発見した場合は躊躇せず電話をしましょう。
一般の人から見て主観的に"児童虐待があったと思うであろう"という場合でよいとされています。虐待の事実が明らかでなくとも、児童や家庭の様子から虐待を心配される際には警察や児童相談所などに相談してください。
名前や住所を告げずに「匿名」の通報もOKです。
通報した方や通報内容についての情報が漏れることはありません。
取材協力:茨城県警察本部