防災情報をはじめ、地域密着の情報や音楽、教養、スポーツ番組を発信するコミュニティFM「エフエムかしま」。東日本大震災では地域の食糧や生活用品の供給情報、井戸や風呂場などの情報を24時間体制で放送して、近隣住民の大きな力となりました。開局から16年目を迎え、鹿嶋市に拠点を置く地域ラジオ局として、鹿行地区の地域活性化や防災対策に挑戦するエフエムかしまの取り組みをご紹介します!
(※内容は2016年3月25日時点のものです)
近藤社長は日本コミュニティ放送協会関東地区協議会会長も務め、関東にある43の地域FMとの連携を強めています。
現在、全国で約300局が開局されているコミュニティFM。半径10~20キロ程度の受信エリア内で災害時の防災情報や生活情報、地域の情報を発信する地域限定のラジオ局です。その中の一つであるエフエムかしまは、茨城県内で2番目となる地域FMとして2000年8月に開局しました。
2004年6月からクラリネット奏者で「かしま大使」としても活躍中の近藤良社長が就任。現在は鹿嶋市交流会館の一角にあるスタジオで技術、編成、総務、営業の社員8名、地域の主婦を中心としたパーソナリティーらと共に24時間放送を続けています。
自主制作番組のメインとなるのは、朝昼夕の情報番組と平日午後1時からの音楽番組。中田浩二CROも登場する鹿島アントラーズの特集番組や新日鐵住金鹿島硬式野球部の実況など、地域スポーツを紹介する番組もサポーターから好評です。平日12時30分からの「かしまっ子集まれ!」「ようこそ、宇宙研究室へ」などの子ども向け教養番組は、鹿嶋市内の全小学校の給食中に放送され、地域の子供たちに人気。これまで本格クラシック番組、地元の青年会議所メンバーが街づくりを語る番組、鹿嶋市担当の新聞記者が取材のこぼれ話を紹介する番組などオリジナリティ溢れるプログラムを制作しています。2012年9月は鹿島記者クラブにオブザーバーとして加入。地域メディアとしての地位を確立しました。昨年開催された「第1回鹿嶋っ子夏フェス」「ベートーヴェン市民第九交響曲コンサート」ではイベントの主催やコンサートの録音、撮影、CDやDVD制作なども手掛け、4月からは新たに埼玉大学名誉教授・暉峻淑子さんによる教養番組「豊かさとは…」がスタート。バラエティ豊かなコンテンツを作り続ける注目の地域ラジオ局なのです。
「私自身、どんな環境でもいい演奏を届けていたら、良い出演料とステージに上がるチャンスを得られました。地域の個性を活かしながらクオリティの高い番組を制作して、会社としての商品価値を高めれば、収入も増え、また更にいいコンテンツを提供することができます。地方から日本一のものを作ってもいい訳ですよ」と同局のタクトを振る近藤社長は語ります。社長の仕事は地域の人脈を広げること。エフエムかしまの良さを認知してもらうため、自ら広告塔となり、各行政との連携や交渉、スポンサーや協力者集めに奔走。さまざまな地域の集まりに足を運び、烏龍茶だけで三次会まで出席したこともあるのだとか。
また、近藤社長は番組編成だけでなく、ハード面の整備も必要不可欠と考えていました。就任後から音楽家の人脈を通じて大手音楽会社スタッフのサポートを受けながら、最新の放送機材やシステムを導入。災害時の非常電源の確保、放送エリア拡大に備えて鹿嶋市役所屋上にあるアンテナの交換も実施しました。鹿嶋市内の全て小中学校でFM放送が受信できるよう、無償で機材を提供。NHKの地震や災害の情報を共用できる協定を水戸放送局と結んで、不測の事態に備えました。
徳間ジャパンコミュニケーションズでCDを多数リリースしている近藤社長。芸術音楽研究所KASHIMAも主宰しています。
音楽教諭の教育免許も持つ水井部長。近藤社長と二人三脚でクラシック番組のMCも務める番組プロデューサーです。
東日本大震災時に寄せられた情報の数々。当時の記録として、また今後の非常時に活かすために保管されています。
そして、2011年3月11日。あまりテレビで報道されることはありませんでしたが、東日本大震災により鹿嶋市は甚大な被害を受けました。エフエムかしまは震災発生直後から臨時放送局として、受信エリアを2.5倍に拡大。鹿嶋の子どもたちの安否情報を再優先し、NHKから寄せられた大津波警報など、最新の災害情報を放送します。鹿嶋だけでなく近隣市町村の井戸の場所、ブルーシートの販売店、変則的なスーパーや飲食店の営業時間など、24時間休まずに番組を放送し続けました。「通行止めの道を迂回して病院へ行くルートは?」などの要望もフレキシブルに対応。リスナーの素早いレスポンスで即解決した諸問題も少なくありません。万一に備えていた防災対策が功を奏し、その役割を十分に発揮したエフエムかしま。近藤社長は「反省点がほとんどないぐらい、スタッフたちの働きは見事でした」と当時を振り返ります。
しかし、スタッフたちも被災者であり、加えて連日24時間体制の放送…。心身の疲労がピークに達し、体制が崩壊寸前になったこともあったそうです。そんな時、スタッフたちを支えたのは、リスナーである地域の人々でした。「毎日淹れたてのコーヒーを持ってきてくれた方、わざわざおにぎりを持参してくれた方もいました。リスナーからたくさんの応援メッセージや感謝の声が寄せられ、今でも思い出すだけで涙が込み上げてきます」と番組制作編集部の水井美佐部長は語ります。
スポンサーもエフエムかしまの貢献を讃え、被災時にCMを放送しなかったにもかかわらず、その期間のCM料を支払ってくれました。震災を通じて、地域を支え、地域に支えられている放送局であることを、スタッフ一同は心底実感したのでした。
すでに鹿嶋市、行方市、潮来市と災害時の地域情報発信の協定を結んでいるエフエムかしま。今後は鹿行地区全体を活性するための情報を発信して、地方創世の拠点となりたいと考えています。
「鹿行5市のコミュニティのための放送局になることは、必然だと我々は考えています。3度目のアンテナ交換をして、非常時も安定的な放送を届けるための整備を進める予定です。もちろん放送法、電波法など法律を守りながら、鹿行地区全域に放送を届けられるように、ギリギリの中で努力をしていきたいです」と近藤社長。
鹿行は芸術や文化、歴史、スポーツなどがさかんな地区。エフエムかしまはこれからもこの個性溢れる地域の魅力を精力的に発信していきます。
昨年4月に移転したエフエムかしまは現在3つのスタジオで放送中。耳に残るハイクオリティなCM制作も好評です。
エフエムかしま市民放送株式会社
茨城県鹿嶋市鉢形1527-1
Tel:0299-84-7777
インターネットでも同時放送中!
詳しくは公式HPをチェック!
http://767fm.com
番組へのリクエストはハガキ、FAX、メールで受付中!
〒314-0097 鹿嶋郵便局私書箱37号 エフエムかしま市民放送株式会社まで。
リクエスト専用FAX:0299-85-0130
メール:fmk@767fm.com