前回対戦した今季の開幕戦は0-0で両チーム痛み分けのドロー。その後、清水は成績不振から途中で監督が交代し、昨年までの3年間、水戸の指揮を執った秋葉忠宏監督が就任。前節を終えた時点でリーグ2位をキープし、この試合に勝利すれば無条件でJ1昇格が決まります。 対するのは、2023年を締め括るラストゲームに際し、ここ6戦勝利がなく、来季に繋がる希望を示したい17位の水戸。これまで過去7度も他クラブのJ1昇格を見送って来ました。 目の前での清水の昇格を必ず阻止する―――。 選手達はプロの意地や価値を証明する戦いへ、そして昨年まで秋葉監督の下で2年間ヘッドコーチを務めた濱崎芳己監督は指揮官としてのプライドを懸けた新旧監督対決に挑みました。
試合当日の水戸市は、冬が到来したかのような寒さと不安定な曇天に覆われるあいにくの天候。 そんなコンディションにも関わらず、決戦場となるケーズデンキスタジアム水戸には早朝からブルーとオレンジのユニフォームやグッズをまとった大勢のサポーターが詰めかけ、試合3時間前の入場開始時間にはスタジアムに隣接する駐車場まで伸びる長蛇の列が。 また、スタジアム前のサブグラウンドでも様々なイベントが開かれ、飲食ブースをはじめとするスタジアム周辺はどこもかしこも両チームのサポーターでごった返し、人波をかきわけて進む姿があちこちで見られました。
そして、13時。 9,219人の大観衆が見守る中、柿沼亨主審のホイッスルが鳴り響き、満を持して運命の決戦の火蓋が切られました。 清水はJ2ナンバーワンの77得点を挙げる強力な攻撃力を誇り、ベテランDFやGKが揃う守備陣も失点数リーグ2位とほぼ最少の鉄壁。攻守両面でJ2最強クラスです。 その難敵に挑んだ水戸は序盤からハイプレスを徹底し、ボールを奪った後はショートカウンターを仕掛け前半から相手陣内に押し込む狙い通りの展開に。清水の攻撃を封じる濱崎監督の巧みな戦術により、前半は清水のシュート数を0本に抑えるなど水戸のペースで試合を進めます。
両チームスコアレスで折り返した後半は清水が徐々に本領を発揮。水戸は清水の前線からの激しいプレスに翻弄され、背筋がヒヤリとするピンチの場面も。両チーム一進一退の攻防が続きます。 スコアを動かしたのは62分、ホームの水戸。清水DFの緩いパスを見逃さなかったMF杉浦文哉選手が相手ペナルティーエリア付近でボールを奪うと、すぐさま高い位置からカウンターを発動。杉浦選手から絶妙なタイミングで上がったクロスを中央に駆け上がったFW安藤瑞季選手がダイビングヘッドでネットに突き刺し、遂に水戸が均衡を破ります。電光石火の値千金のゴールで、スタジアムは地鳴りのような大歓声に揺れました。
待望のリードを奪い、このまま完封勝利を果たしたかった水戸ですが、あと2点が是が非でも必要な清水の猛攻にディフェンスの一瞬の隙を突かれます。 81分、清水DF山原怜音選手のクロスを昨シーズンのJ1得点王チアゴ・サンタナ選手にヘッドで合わせられ、試合は同点に。しかし残り時間が刻々と減るなか焦りが募る清水に対し、水戸は次々とフレッシュな選手を投入して応戦。堅守を敷いて最後まで清水の逆転を許さず、試合は1-1のままタイムアップへ。 開幕戦と同じドローという結果。勝利こそ出来ませんでしたが、大方の戦前の予想を覆し、清水の自動昇格を見事に阻止する健闘を見せた水戸ホーリーホック。今季磨いた攻守のスタイルを存分に発揮した見ごたえあるゲームに、満員のスタンドから大きな拍手が贈られました。
この試合の結果により、今シーズンの最終戦績は11勝14分17敗で勝ち点47。水戸ホーリーホックが2000年からJ2に参戦して以降、過去ワーストに次ぐ17位でのフィニッシュです。 試合後に行われたセレモニーでは、楠本卓海キャプテン、濱崎芳己監督、小島耕社長がクラブを代表し、水戸ファミリーに熱いメッセージを送りました。 まず始めに立ったのは楠本キャプテン。 「ある試合の時、サポーターが掲げてくれた『腹を括れ 俺達は死んでもついていく』という横断幕を目にして背中を強く押してもらいましたが、自分達はまだまだ足りなかったと実感しています。しかし悪いことばかりではなく、10戦負けなしや4年ぶりの3連勝もあり、若いチームなりに必死になって出せた結果だと思います。今年果たせなかった責任や覚悟を来年は死んでも取り返しにいかなければならないと思います。ファミリーが心の底から応援したくなるチームを作っていきます」 ホームで多くの勝ちを届けられなかったこと、北関東王者からの陥落、落胆する試合が続いた今季の結果への反省と、来季への強い気持ちを語りました。
続いて、今季チームの指揮を執った濱崎監督。 クラブを支えるパートナー企業やボランティアスタッフ、毎試合熱い応援をしてくれたサポーター、コールリーダーを卒業するゆーてぃんさんに感謝を述べ、今季の戦いを次のように締め括りました。 「プレシーズンマッチで鹿島アントラーズに勝利して期待を感じさせるスタートでしたが、なかなか思い通りに勝利を重ねることができず、一時期は残留争いをするなど、シーズンを通じて不甲斐ない戦いを続けたのは私の責任。ただ選手達はどんなに苦しくても最後まで戦うことをしてくれました。今日のこの試合も、最後は胸を張って誇れるゲームだったと思います。来シーズンも我々に力を与えていただき、一緒に新しい景色を見るためのシーズンを迎えて、努力を絶えずに進んでいかなければならないと思います」
- 『育成型クラブだとしても結果を持ってクラブの前進を』 - この日スタンドに掲げられた横断幕でサポーターからのメッセージを受け止めた小島社長は、「一番大事な結果という部分で皆さんに対して応えることが出来なかったのはクラブの力不足。今年のように皆さんをがっかりさせて月曜の仕事や学校に送り出すのは僕らの本意ではありません。来年、我々は強くなりたいと思います。結果を出したいと思います。水戸ホーリーホックは強くなります」と力強く宣言しました。 リーグ戦の全日程を終え、たくさんの熱狂と喜び、苦しみ、悔しさ、そして希望を残した2023シーズンの水戸ホーリーホック。このあとチームは束の間のオフを挟み、来年、クラブ創設30周年の節目の年を迎えます。 アニバーサリーイヤーをさらなる飛躍の年へ。 水戸ホーリーホックの2024シーズンの躍進に期待しましょう!
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