ショートストーリー
明日への贈り物 Episode28
目の前で起きた母から子へ言葉の虐待
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
怒鳴る母親とその子供 隣家の親子にとまどう私
「今日も隣の人、あの子に怒ってたね」
「今日もか。そっか……」
我が家の隣に住む家庭には、幼稚園児のお子さんがいる。朝、私たちが出掛ける時、お隣の母親が道端で子どもを怒鳴りつける場面に度々遭遇した。その日もまた夫が目撃したようだった。翌朝、私が外に出ると、その親子も家を出るところだった。
「早くしろよ!遅いんだよお前は!ったく……」今にも手が出るんじゃないかと怖くなるほどの口調で今朝も怒鳴っている。その子自身は何も聞こえていないかのように無表情な顔で、ひたすら母親の後を付いて行く。なにか声を掛けた方がいいのだろうけど、お隣といっても交流がないし、声を掛ける勇気はなかった。「このバカ!てめえいい加減にしろよ!」母親からの容赦ない怒声を浴びるあの子の気持ちを思うと、心が沈む。
「あれって虐待なんじゃないかな」直接暴力をふるうところを見てはないけど、ずっと不安が募っていた。
その夜、夫に相談すると「189に相談できるんじゃない?」とアドバイスされた。そうかもしれないけど、私にできるだろうか。母親の怒声とあの子の無表情な顔が、あれからずっと心の中に残っている。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています