ショートストーリー
明日への贈り物 Episode18
近所から聞こえてくる どなり声と子どもの泣き声
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
もしも虐待じゃなかったら 確信が持てずに通告を躊躇う私
我が家は夫と私、息子の三人家族。息子は4月から小学校に通うのを楽しみにしている。
そんな春休みのある日、近所のアパートに他県から引っ越してきたという親子がご挨拶に見えた。
笑顔の明るいママと小さな二人の兄弟、聞けばお兄ちゃんのT君も息子と同じ新一年生だと言う。
子ども達はすぐに仲良くなり、毎日お互いの家を行ったり来たり。T君のパパは今は休職中で家に居るらしく、優しくて面白い人だよと息子がよく話してくれた。
暫く経った頃のある夜、窓の外から聞こえる子どもの泣き声にふと気付いた。
泣き声はすぐに止み、その日は気に留めなかったが、それから度々、子どもの泣き声と男性のどなりつけるような声が聞こえるようになった。
なかなか止まない夜は189への通告も何度か考えた。
でも近所に子どものいる家庭は数件あるし、声がT君の家のほうから聞こえることにも私は動揺し、ダイヤルできなかった。
T君のママに気軽に「声」のことを聞ける間柄じゃないから、間違いだったらと考えるとやはり行動を迷う。
でも、もし間違いじゃなかったら…。
よし、早とちりならそれでいい。虐待かどうかは私が判断すべきじゃない。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています