4万5千人。この数字は、今、親の病気や離婚、経済的困窮、そして身の安全を脅かす児童虐待など、さまざまな悲しい事情によって家族と離れて暮らす全国の子どもの数です。この子どもたちに、安心し健やかな日々を暮らせる環境を届ける手だてのひとつが里親制度。茨城県里親連合会の事務局を担う地域家庭支援センター「ほまれ」の片根志雄さんと、里親制度によって家族となった八文字さん親子にお話を伺いました。

育ての親として愛情を注ぎ
すべての子どもに「家庭」を

現在、家族と離れて生活することを余儀なくされている子どもの数は茨城県内だけで約700人にのぼり、そのうち8割を超える子どもが児童養護施設などで生活しているのが現状です。そうした環境のなかに置かれている子どもを自分の家庭に迎え入れ、実親に代わって子どもを育てていくのが「里親」です。

里親制度は、児童福祉法に基づく公的な児童保護制度。児童相談所や里親支援機関で研修を受けた方、子どもの養育に対する理解と熱意、そして豊かな愛情を持つ方であれば原則として誰でも里親になることができます。

里親になることは養子縁組を組むことだと捉えられがちですが、里親制度と養子縁組制度は別のもの。養子縁組を前提として里親になることもできますが、原則として18歳未満の子どもを一定期間家庭に迎え入れ、あたたかい養育環境を提供するのが里親の役割です。
「ショートステイや週末里親、季節里親と呼ばれる短期間の委託など、里親の間口は年々広がっています。すべの子どもが家庭という豊かで穏やかな環境のもとで暮らせるよう、より多くの方に里親制度への理解や関心を深めていただきたいですね」と話す片根さんは、地域家庭支援センター『ほまれ』のセンター長としてあらゆる面から里親のサポートを行っています。

地域家庭支援センター「ほまれ」の片根志雄さん

地域家庭支援センター「ほまれ」の片根志雄さん

里親家庭の交流から
地域に広がる支援の輪

里親になるための事前研修や審査、登録、マッチングなどの窓口となるのは、児童相談所や乳児院、児童養護施設のような里親支援機関です。常陸太田市の児童養護施設『誉田養徳園』が運営する『ほまれ』も同機関の一つであり、里親登録研修やセミナーなどの運営を行っています。

また、里親とその関係者がつくる団体として「地区里親会」があり、同会では里親同士の研修交流会を行うほか、子どもと一緒に参加できる行事なども行っています。現在、茨城県内には、水戸、日立、那珂・久慈、鹿行、稲北、土浦、県西の7つの地区里親会があり、これらを統括する「茨城県里親連合会」の事務局も『ほまれ』内に置かれています。

里親連合会は県全体の研修や行政との話し合い、地域への情報発信などさまざまな役割を担っていますが、里親と子どもたちにとって何より大きいのは相互交流の場としての役割です。悩みを分かち合ったり困りごとを相談したりできる、同じ境遇の仲間たちがいるのはとても心強いこと。さらに、実の親子でないことを子ども本人に伝える「真実告知」の場面でも、連合会の活動を通じてほかの里親家庭と交流する中で子どもが自然と真実を受け入れやすくなるケースも多いそうです。

自分は「おとうさん」
日々実感する、親の喜びと幸せ

茨城県里親連合会の会長を務める八文字喜久夫さんがはじめて里子を迎え入れたのは17年前のこと。それまで教員や校長として子どもたちの成長過程に携わっていながら、里親制度について無関心だった当時のことを悔やみながら振り返ります。
「きっかけは、妻のひと言でした。私たち夫婦は子どもを授かることができずにいましたが、私が55歳のときに『里親の研修会に行こう』と妻に誘われたんです。最初は躊躇しましたが、妻の社会貢献したいという熱意に押されるかたちで説明会に参加しました」

八文字さんが躊躇した最大の理由は、還暦近い自分が子どもに「パパ」と呼ばれることへの違和感。「幼い子どもに対して、それはとても申し訳ないことだと感じたのです。でも説明会に行ってみると自分と同じくらいの年代の方も多く、わだかまりがすっと解けました」

講習や研修を重ねて里親となる準備を進め、やがて3歳9カ月の女の子を迎え入れた八文字さん夫妻。かまって欲しくてついた子どもの噓に戸惑ったり、アニメの主題歌を一緒に覚えたり、些細な日常を積み重ねながら親子のきずなを紡いでいきました。
「実親が『パパ』だから、私は『おとうさん』。おとうさんと呼ばれることがこんなに嬉しいとは、里親になるまでは思いもしませんでした」

茨城県里親連合会会長で里親でもある八文字喜久夫さん

茨城県里親連合会会長で
里親でもある八文字喜久夫さん

支えてもらった感謝を胸に
家族のきずなを広げていきたい

この日、取材に同席してくれた理沙さんは今年で23歳になる八文字家の長女。8年前、高校受験を控えた15歳のときに里子となり、20歳で養子縁組を結びました。また、八文字さんがはじめて里子に迎えた女の子も現在は養子となり、元気に専門学校へ通っています。
「実の母親と暮らした時期の思い出もありますが、施設での生活が長かったので、『普通の家庭』がどんなものか興味がありました」と、八文字家へ来た当時の思いを振り返る理沙さん。
「おとうさんは話しやすくておもしろい人、おかあさんは優しくて物静かな人。親子でぶつかってしまった時期もあるけど、学校で何かあるとすぐ駆けつけてくれたり、いつも温かいご飯を用意して帰りを待っていてくれました。18歳になるときには『家族だからこれからも支えていきます』と当然のように両親が養子縁組を勧めてくれ、二人からはたくさんの思いやりを感じています」

八文字さん夫妻への感謝とともに、養護施設の先生にも「母親代わりとなってずっと支えてくれた」と感謝の気持ちを持ち続けている理沙さん。現在児童養護施設の職員として働き、今度は自分が子どもたちを守り支える存在となることを目指しています。

里親制度は、たくさんの手で子どもたちを虐待や育児放棄から守ることのできる制度です。私たちも一人ひとりが関心を寄せるところから支援をはじめてみませんか。

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個人、団体、企業など種別は問いません。オンラインも可。
ぜひ里親になりたい方、興味がある方はお問合せください。

【問合せ】地域家庭支援センターほまれ
【メール】homare@hondayoutokuen.or.jp
【TEL】0294-87-6656

茨城県里親連合会HP

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