様々な事情によって生みの親の元では暮らせない子どもを、子どもが欲しくても恵まれない夫婦に繋ぐ特別養子縁組。そんな制度を通して親子の縁組みを支援するNPO法人「Babyぽけっと」にお話を聞きました。
特別養子縁組制度とは
温かな家庭に迎え入れるために
NPO法人Babyぽけっと代表の岡田卓子さん
予期せぬ妊娠、経済的や環境的な事情で子育てが難しい親が、育ての親に子どもの幸せと安定した養育を託す特別養子縁組。かけがえのない子どもたちが温かい家庭で愛情を持って育つ環境を作るための公的な制度です。
一般的な養子縁組と大きく違う点は、生み親との縁は切れ、育ての親の実子扱いになること。戸籍上の続柄は、一般的な養子縁組では「養子」「養女」となりますが、特別養子縁組の場合は「長男」「長女」と記載されます。つまり、法律上は育ての親だけが子どもの親となり、実子として生涯にわたり安定した家庭に迎え入れることができるのです。これまで養子となる子の年齢は「原則6歳未満」でしたが、2019年の法改正で「原則15歳未満」に引き上げられ、育ての親を希望する人の負担が減るように成立までの手続きが見直されるなど、間口が広がりつつあります。
特別養子縁組の窓口は、公的機関の児童相談所、民間のあっせん機関、行政や民間のあっせん機関と連携した産婦人科医院などの医療機関の3つ。茨城県内に拠点を持つ特定非営利活動法人「Babyぽけっと」は民間あっせん機関の1つとして、生みの親と育ての親の架け橋となって活動しています。
「三度の飯より子どもが好き」
第三の親として親子の架け橋を
2010年6月に設立されたBabyぽけっとは、2012年6月に茨城県で特定非営利活動法人として認証された国内優先型の特別養子縁組団体です。「守れ小さないのち」「つなげ親たちの輪」「生かせ親子の絆」という3つのモットーを掲げ、思いがけない妊娠や出産で悩んでいる親、子どもを迎え入れたい親、子どもたちの未来のために日々奮闘しています。
全国3ヶ所に生みの親専用シェルターがあり、経済的な理由、パートナーの暴力など様々な理由で安全に出産できない生みの親のために一時保護的な生活の場、産前・産後のサポートを無料で提供。生みの親と育ての親子の交流が盛んなことも特徴です。
その代表である岡田卓子さんは、これまで500人以上の赤ちゃんを新しい家族に繋いできた第三の親。子どもが欲しいと願いながらも叶わない中、近所に住んでいた認知されていないハーフの子どもの育児を3年半の間サポートした経験から、児童相談所の里親制度など親元で暮らせない子どもたちを知り、自身も特別養子縁組で迎え入れた子を育てる母親です。
岡田さんは「三度の飯より子どもが好き。誰一人として不幸な子にさせたくないのです」と活動への想いを力強く語ります。
妊娠しても、様々な理由で子どもを育てることができない生みの親、子どもを望みながらも授かることが叶わなかった夫婦をサポートすることで、子どもたちの未来と幸せを守り続けています。
事務所には女性専用のシェルターも併設
子どもの命のバトンを繋ぐ
制度の活用で念願の4人家族へ
都内に住む青柳さん夫妻は、そんなBabyぽけっとを通じて2人の子どもを特別養子縁組で授かった育ての親です。約5年に渡る不妊治療を経て、特別養子縁組で子どもを迎え入れる選択し、様々な児童相談所や民間のあっせん機関を巡った中でBabyぽけっとに辿り着きました。子どもを望んで10年。面接、研修、登録して数カ月後に男の子が、その約一年後には女の子が新たな家族の一員となりました。
温かい人柄が印象的な青柳さん夫妻
青柳さん夫妻は「本当に有り難いです。もっと早くこの特別養子縁組の制度を知りたかったですし、活用すれば良かったです。これまで色んな忸怩たる思いがあったり、子どもとはもう縁がないのでは…と諦めかけたこともありましたが、逆転ホームランを打った気分。子ども2人なんて高望みだと考えていましたので、今でもこの状況が信じられないぐらいです」と喜びを語ります。
両親や親戚など周囲の人々も2人の子どもたちを大歓迎。「実子がいないので比較は出来ないのですが、すっごく可愛い!もうみんなメロメロですよ(笑)」と子どもたちは家族のアイドルになっているそうです。
「乳児院には特定の親がいない子がたくさんいました。そういう子どもが世の中から減るのは大事なこと。もちろん子育ては楽しいだけでなく不安もありますが、子どもたちを一貫して見守る存在になっていきたいです」と意気込んでいました。
特別養子縁組は増加傾向にあるものの、まだ認知度が低く、成立件数が少ない現状があります。子どもを欲しくても恵まれない夫婦のために、「望まぬ妊娠で産んでも育てられない…」と追い詰められ、出産後に子どもを虐待してしまうという万が一の悲劇を防ぐために、特別養子縁組制度という選択肢があることを忘れないでください。そしてこれからも社会全体で子どもたちの命のバトンを繋ぎ、明るい未来を届けていきましょう。
INFORMATION
特定非営利活動法人NPO Babyぽけっと
妊娠SOS専門ダイヤル 0120-585-931