ショートストーリー
明日への贈り物 Episode11
虐待を打ち明けた友達に僕が出来ること
いばらきの子どもと子育てファミリーへある家族の物語をご紹介します。
この物語が誰かの救いや気づき、そして児童虐待防止につながることを願って。
Aくんからの小さなSOS 身近な大人に話す勇気
放課後、同級生Aくんとの帰り道。クラブのこと、好きな動画のこと、担任の先生のモノマネ。二人で楽しく話をしていると、Aくんのシャツの袖から紫色の大きなアザが目に入った。
「ねえ、その腕どうしたの?」
「昨日、宿題やるの遅かったからお父さんに叩かれた」
僕は驚いて歩けなくなった。
「普段のお父さんは優しいけど、お酒を飲むと機嫌が悪くなって怖いんだ」
Aくんはうつむいて、ジッと足を見ている。
「お母さんは何もしてくれないの?」
「守ってくれるけど、お父さんと喧嘩になるとお母さんも叩かれるから……」
Aくんの話に心臓がドキドキする。
「……それ、警察とかに言わなきゃダメなんじゃね?」
「そんなこと出来ないよ。警察って何だか怖いじゃん……」
「じゃあ先生とか、僕のお母さんに言うのは?」
「……大人に話してもいいのかな」
「わかんない。でも、お母さんならどうしたらいいか知ってるかも」
「……」
僕らはまだ立ち止まった場所から動けない。
※取材した実例をもとに一部フィクションを加えています