異国の雰囲気が漂う、煉瓦窯内
焼成室にはそれぞれ窯 の入り口があり、丈夫なイギリス積みの構造。
2階の燃料の粉炭を入れる投炭口。 燃料を天井から入れていました。
「野木町煉瓦窯」の歴史
(※内容は2017年9月25日時点のものです)
西欧の国に足を踏み入れたかのような美しいたたずまいの野木町煉瓦窯。長い煙突と正十六角形の造形美に異国の雰囲気が漂います。
この煉瓦は、『ホフマン式輪窯』といわれ、1858年にドイツ人技師のフリードリヒ・ホフマンが特許を取得しました。ホフマン式輪窯とは、窯を環状に配置し、点火後、空気の流れによって火を回し、連続して煉瓦の焼成が行える窯のことで、野木煉瓦窯は16区画の焼き窯があるため、煉瓦の大量生産が可能になり、北関東を中心に東京などにも出荷されました。
明治23年から昭和46年までの約80年もの間、煉瓦を製造し続け、日本の近代化を支えた野木町煉瓦窯。年間生産量は約250万〜300万個に達したといわれています。
銀座煉瓦街建設以降、需要が高まる煉瓦製造業を支えるため、各地にホフマン窯が造られましたが、現在稼働しているものはなく、遺構が残っているは全国に4基のみです。
なかでも野木町煉瓦窯は、日本最古の煉瓦窯にして、ここまで原型をとどめていることが極めてめずらしいため、各方面からの評価が高く、昭和54年に国の重要文化財に指定されました。
野木町煉瓦窯を愛する人々の想い
地元ボランティアによる見学ツアーも!
焼成した煉瓦は思川や渡良瀬川を通じて船や鉄道で運送され、現存する鉄道の橋脚や水力発電施設などに使われているといいます。そう教えてくださったのは、『野木町煉瓦窯を愛する会』の会長である小村敏雄さん。ボランティアで煉瓦窯の見学ガイドを務めています。見学ツアーでは、煉瓦窯の成り立ちや仕組みについて詳しく知ることができ、煉瓦窯見学をよりいっそう楽しむことができます。
煉瓦窯は平成23年に補修を目的とした修復工事が開始され、平成26年に完了しました。その際、野木町煉瓦窯を愛する会のメンバーが行った研究データも修復作業に役立てられたといいます。
愛する会の会員の中には「私たちが子どもの頃は、煉瓦窯が遊び場でした。冬場には作業員の方が、煉瓦を焼いた火を使って、窯にさつまいもを入れて、焼き芋を作ってもらったこともありました」と口々に煉瓦窯での思い出を語りました。
愛する会の小村会長は「私たちにとっても思い出深い、この『野木町煉瓦窯』をぜひ見に来てください。当時、どのように煉瓦を作っていたのか、よくおわかりになると思います。野木町が誇る『野木町煉瓦窯』の魅力をこれからも広く皆さんに知っていただきたいです」と活動への意欲をみせました。
野木町煉瓦窯を愛する会会長/小村敏雄さん
未来へつながる産業遺産
煉瓦積み職人育成のための取り組み
野木町には、煉瓦積みの職人たちを育成するために造られた煉瓦造りの建物が存在します。
旧新井製糸所跡地にある新井家ふるさと記念館の養蚕棟には、野木町煉瓦窯で焼かれた煉瓦が使われています。旧新井製糸所跡地には国の登録有形文化財に認定された3つの建造物があり、当時の面影を今に伝えています。
新井製糸所創設者の新井元之助さんは、下野煉化製造会社の役員を務めていたこともあり、煉瓦窯で廃棄された、焦げた煉瓦や形の崩れた煉瓦を使って、職人養成のため、地下一階、地上二階の建物建設を行ったそうです。
元之助さんの孫にあたる新井元之さんもまた、野木町煉瓦窯を愛する会で活動するメンバーのひとりです。祖父が大切にしてきた煉瓦窯を後世に伝えたいと立ち上がりました。新井さんは「私は幼少期、祖父のもとで過ごしたこともあり、野木町煉瓦窯の話を何度も聞かされて育ちました。大人になった私ができることは、祖父が残してくれたものを守り、語り継いでいくことだと思いました」とまっすぐなまなざしで語りました。
幾つもの想いが重なりあい、守り、愛されている野木町の煉瓦窯。美しいたたずまいとともに、数々の歴史を刻みながら、未来へつながる産業遺産として、これからも野木町の人々の心を明るく照らし続けていくことでしょう。
▲ 職人育成の過程で出た、くず煉瓦で造られた養蚕棟の壁。 焦げていたり、歪んでいたりと見た目は失敗作のようですが、関東大震災や東日本大震災にも耐えることができました。
れんがまつり開催!in野木町煉瓦窯
10/7(土)、8(日)9:00~
7日には野木神社の太々神楽や鈴木杏奈ミニコンサート、8日は野外音楽フェスなどが行われ、模擬店やワークショップも楽しめます。詳細はお問い合わせください。
お問合せ/野木町煉瓦窯イベント実行委員会tel.0280-33-6667
煉瓦窯を見学しよう!
新井家ふるさと記念館
3棟の国登録文化財の建物のある私設博物館
<左から>煉瓦倉、漆喰蔵、木造事務所家屋
栃木県下都賀郡野木町野渡328
TEL.028 0-55-2107
◆野木町煉瓦窯◆
見学時間/9:00~17:00
未公開日/月曜日・年末年始(12/29~1/3)
※国民の祝日開館、翌平日閉館
煉瓦窯見学料/高校生以上100円、中学生以下無料※15人以上の団体の場合一人につき80円
住所/栃木県下都賀郡野木町大字野木3324 -1
野木町煉瓦窯の詳細はこちら!
隣接する野木ホフマン館には煉瓦窯展示室やカフェ、休憩スポットもあります♪