日本で唯一の篆刻専門美術館
篆刻ゆかりの地 古河市
(※内容は2017年8月25日時点のものです)
篆刻美術館は、平成3年に日本で唯一の篆刻を専門とする美術館として開館しました。趣ある建物は、大正9年に建設された3階建ての石蔵を改修したものです。展示室にも当時の雰囲気が残されています。
当時、この大正ロマン漂う建造物を文化財として保存し、どのように活用していこうか検討されていましたが、古河市は日本を代表する篆刻家・生井子華や大久保翠洞を輩出した地であることから、篆刻ゆかりの地として、篆刻を専門とする美術館を設立する構想が浮上し、篆刻美術館が誕生しました。現在は生井子華の遺作を中心に、篆刻の魅力や歴史を今に伝えています。
また館内では、小学生古文字書道展や中学生卒業記念篆刻展なども行われ、歴史と今が交差する場所として賑わいをみせています。再生保存された風情あふれる建物は、平成10年に国の登録有形文化財に登録されました。
古河市に縁のある篆刻家たち
明治37年、印章業を生業とした家に生まれた生井子華は、26歳の時に篆刻家になることを志し、28歳で西川寧に師事します。37歳の時、第十一回泰東展において篆刻部最高賞を受賞。45歳の時、第五回日展において特選を受賞し、翌々年の日展においても同賞を受賞しました。52歳の時に日展の審査員として迎えられます。
その後古河市文化賞や勲四等瑞宝章などを受賞。85歳で亡くなるまで篆刻制作に没頭し、骨格の確かな、独自の風格が漂う作品を発表し続けました。
明治39年、同じく印章業の生家に生まれた大久保翠洞は、はじめに白石雅洞を書の師とし、22歳の時、小沢古我に就いて書の研究に専念します。24歳で迎えた泰東書道院第一回展を皮切りに、数々の書道展に入賞を果たします。
書と並行して21歳の時、服部畊石に師事して本格的に篆刻を学び、以後西川寧や山田正平に師事して篆刻の腕を磨きました。また、板に文字を刻む刻字にも力を入れ、63歳の時に日本刻字協会を設立。若手の育成にも貢献しました。
その後、古河市文化賞や古河市市民栄誉賞などを受賞。翠洞の主な作品としては、日光輪王寺三仏堂の『金堂』や奈良長谷寺本堂の『大悲閣』などの扁額があり、その繊細かつ生命感あふれる作風は、今も多くの人々を魅了しています。
皆様に親しまれる美術館を目指して
大人から子どもまで楽しめる篆刻体験
今年で27年目を迎える篆刻美術館では、那須大卿先生、市川両僊先生、柳濤雪先生による篆刻講座の他、篆刻活動グループの桃城印会(会長 北野芳男さん)、講座生などの協力のもと、篆刻体験を開催しています。
篆刻体験は毎回好評で、体験に来られる方は市内の方だけでなく、首都圏近郊から訪れる方も多いといいます。印材の説明や用具の使い方、石材の刻し方など、篆刻の手法をしっかり学べるので、とても人気があるそうです。
篆刻家として活躍する講師の三枝龍泉先生は、「『篆刻』と聞くと難しそうで、身構えてしまう方もいらっしゃるかと思いますが、刻する文字は篆書だけでなく、楷書やひらがな、場合によっては絵などを刻してみてもいいので、もっと篆刻というものを身近に感じて、楽しんでいただけたらいいなと思います」と語りました。
篆刻美術館の館長は、「篆刻美術館を、古河市の文化活動の拠点のひとつとして活用していただきたい。また、お気軽に足をお運びいただける、皆さまに親しまれる美術館にしたいと思っています。ぜひご来館ください。お待ちしております」と胸の内を語ってくださいました。
篆刻体験で講師を務める先生方。親切丁寧に指導してくださいます。(左から/山口賢一さん、三枝龍泉さん、藤井輝翠さん、竹澤雅司さん)
芸術の秋を感じるこの季節。ぜひこの機会に、篆刻の世界に触れ、この世にひとつしかない自分だけの印章をつくりに、篆刻美術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。
~篆刻体験の流れ~
【1】印の原稿である印稿をつくる⇒【2】印稿をコピーして、コピー原稿を大きめに切り取る⇒【3】コピー原稿の文字のある面を印面に合わせる⇒【4】コピー原稿を印材にセロテープで2ヶ所ほど貼り付ける
【5】貼り付けた上から、オレンジ色の油性マジックを塗る⇒【6】ひと呼吸おき、石をひっくり返して押しつける⇒【7】紙を石から剥がすと印面に文字が転写される
【8】刻す
【9】完成!篆刻体験は大人から子どもまで楽しんでいただけます。親子でのご参加も可能です。
篆刻美術館に行ってみよう!
篆刻体験は要予約です
◎住所/古河市中央町二丁目4番18号
◎電話/0280-22-5611
◎開館時間/9:00~17:00(入館は16:30)
◎入館料/大人200円、小中高生50円、団体(20名以上)150円
◎休館日/国民の祝日の翌日・年末年始・第4金曜日・展示替え期間
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◆篆刻体験は予約が必要となります
予約電話番号:0280-21-1141
【料金】
◎高校生以上…1,200円
◎小中学生…500円
【時間】
◎午前の部…10:00~12:00
◎午後の部…13:30~15:30
※休室日など、ご不明な点はお気軽にご相談ください。